東京・有明の武蔵野大学でこのほど、フジテレビアナウンサーの軽部真一氏、バラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』のプロデューサーから営業局に異動した明松功氏、月9ドラマ『好きな人がいること』などのプロデューサー・藤野良太氏が登壇するトークイベントが開催された。同大学のマスメディアゼミの集大成として行われたもので、マスコミを目指す学生らに向け、テレビ業界での仕事論を中心に、ここでしか聞けない裏話も飛び出した。

今回は、テレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家など、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載企画「テレビ屋の声」の特別編として、この模様をレポートする。

(左から) 藤野良太氏、明松功氏、軽部真一アナウンサー

トップアナウンサーの条件とは

軽部アナは「スタッフと一緒に汗をかくアナウンサーが求められている」と語り、セクショナリズムに陥らず、出る側のアナウンサーも"スタッフ意識"を持つことが重要だと説明した。

軽部アナ

それを実践している例として挙げたのは、『とくダネ!』に出演する笠井信輔アナ。自らのコーナーでは、原稿チェックなど編集長のような役割も担い、『とくダネ!』放送前の『めざましテレビ』に出演している軽部アナよりも、早く出社して準備しているそうだ。ただ、「深夜2時くらいに家を出るので、寝ぼけた状態で、息子の服を着て会社に来たことがありますけどね(笑)」と、ほほえましい一面も明かした。

さらに、『みんなのニュース』の伊藤利尋アナも、「アナウンス室の忘年会とかで、相当面白いVTRを作ってくる。そういうセンスを持つことが、トップアナウンサーになれる要因じゃないかな」と分析し、新入社員の藤井弘輝アナら若手陣にも、日々伝えているそうだ。

また、アナウンサーという仕事について「しゃべる仕事だと思われがちですが、圧倒的に聞く仕事です」と断言。この春からMCを務める『ミュージックフェア』で、ゲストのナオト・インティライミから「いい雰囲気を作ってくれて、気持ちよくしゃべれました」と言われたことがすごくうれしかったといい、最近ではそうした空気を作り出すことを、特に心がけているという。

視聴者が成熟する中でのバラエティPの目線

明松氏は、入社以来バラエティ制作一筋で、チーフプロデューサーを務めていた『めちゃイケ』では、大食いキャラクター「ガリタさん」の愛称で人気を博していたが、今年夏の人事で営業局に異動。「慣れない仕事が多くて、3カ月半で5kg体重が減りました。体調的にはすごぶる好調です」と言うが、軽部アナから「5kg減って今は何kgなんですか?」と聞かれて「118kgですね」と答え、まずはツカミの笑いを取った。

この日はスーツで現れ、軽部アナと藤野氏は「新鮮過ぎる!」と、まだその姿に慣れていない様子。そんな中、テレビ局の営業の仕事について「番組を商品として売ってお金を持ってきて、バラエティ、ドラマ、スポーツ、報道、情報などのセクションがそのお金で番組を作るんです」と説明し、「異動して分かったんですけど、営業の人は、俺たちが金を稼いでいるというプライドを全員持ってるんです。ちょっとカッコいいなと思いました」と、新天地の印象を語った。

明松氏

一方で、長年携わってきたバラエティ制作の考え方についても言及。最近の番組で「本当はドッキリを仕掛けられているのを分かっている芸人がどう振る舞うのかを見るという、裏の裏をかく企画もやるようになった」と、受け手側がある意味で成熟してきた中で、「単純なドッキリをする際に、プロデューサーとしては、1回純粋な気持ちで編集して作ってから、そうしたうがった見方をされる視聴者は、どう見るんだろう?という目線でチェックしていましたね」と、注意を払っていたことを話した。

また、テレビ業界志望の女子学生から、女性の働きぶりについて質問が飛ぶと、「女性プロデューサーは多くいますが、お笑い寄りのゴリゴリの女性ディレクターは、あんまり僕の周りにはいなかったです」と現状を紹介。それでも、「逆に、いないからこそ空席なんだなという思いはずっとある。女性の方がゴリゴリのお笑いを撮ったらどうなるんだろうなというのは、個人的にすごく興味があります」と歓迎した。

この話題について、軽部アナは「女性は確実に増えているので、もうテレビ局は男性社会じゃないですよね」と補足。『めざましテレビ』では、「今日はレディースデーだね」と言い合うほど、スタッフのほとんどが女性の日もあるそうだ。