声優とアイドルのハイブリッドユニットi☆Risの結成4周年ライブにして初の日本武道館公演「i☆Ris 4th Anniversary Live ~418~」が25日、東京・日本武道館にて開催された。

i☆Ris

i☆Risは山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希、久保田未夢、澁谷梓希の6人による声優とアイドルのハイブリッドユニットとして、2012年7月7日に結成し、同年11月7日にシングル「Color」でメジャーデビュー。結成した当時の彼女たちは、秋葉原を中心にライブや、ゲリラ的なチラシ配りなど地道な活動を続けていった。いつか、日本武道館での単独公演ができる日を夢見て……。2016年11月25日。デビューから4年と18日経ったいま、その夢がとうとう結実する。

当時、ライブを開催しても観客が十数人だったこともある。それがいまや、日本武道館で単独公演を行い、約7,000人ものファンがかけつけてくれる存在にまで成長した。彼女たちは、自分たちが多くの人の目にとまるようになったのは、メンバー全員がメインキャストとして出演しているTVアニメ『プリパラ』のおかげだと、口を揃えて言う。たしかにきっかけは『プリパラ』だったかもしれない。だが、そこから自らを武道館アーティストまで成長させていったのは、ほかならない彼女たちの力だ。

そんな彼女たちは、武道館でいったいどんな姿を見せてくれるのか。自信に満ちあふれた姿なのか、それとも「武道館の魔物」に取り憑かれてしまっている姿なのか。会場に充満する期待と不安で、ファンたちがソワソワしているのが伝わってくる。

山北早紀

ステージを見てみる。メリーゴーラウンドの木馬が6体、たてがみと尻尾はそれぞれのメンバーカラーだ。テーマパークをイメージした背景には観覧車やお城、ジェットコースターなどが飾られている。ランウェイには緑、水色、紫、赤、オレンジ、黄色で彩られた虹の架け橋が用意され、アリーナ中央に設置されたミニステージへとつないでいく。

時計は18時半、とうとう開演だ。メンバーカラーのレーザービームが武道館を照らし、センターモニターには、「2012年11月7日」からカウントアップが始まり、1stシングル「Color」から続く歴代シングルのMVを編集した映像が流れている。「彼女たちの、4年間の集大成をこの目で見ることができる」、そう感じた矢先、10……9……8……、運命のカウントダウンが始まる。3……2……1……0。ライブスタートと同時に、6つのセリから登場するi☆Ris。

芹澤優

茜屋日海夏

場内に流れるイントロは、4thシングル「幻想曲WONDERLAND」。記念すべき武道館公演。一曲目は、1stシングル「Color」か、最新シングル「Re:Call」か……などと考えていた自分に愚かしさを感じてしまうほど、これ以上ないぴったりな選曲だ。i☆Risライブでは、「幻想曲WONDERLAND」冒頭の久保田ソロパート「あれ~ここ、どこだろう……?」のセリフを受け、観客が開催会場の名前を叫ぶおなじみの流れがある(久保田がレコーディングの際に自由に入れ、採用されたセリフでもある)。

武道館公演の始まりの曲として「幻想曲WONDERLAND」が選ばれた理由を瞬時に察した観客たちはイントロの時点から雄叫びをあげる。「あれー、ここどこだろう」。久保田の第一声から始まった武道館公演だが、久保田の目にはすでに涙が浮かび、声は震えている。いままでライブで涙を見せるイメージとは縁遠かった久保田。憧れの武道館、そのトップバッターという大任、期待や不安などが入り交じった第一声。デビュー当時、メディア露出に興味や積極性があまりなかったという久保田がいまや約7,000人の前に立ち、問いかけている。「ぶどーかーーーん!!」。観客たちのレスポンスは、いつも以上に力強く、優しく、心地良かった。間奏のダンスパートで、澁谷が久保田の頭をポンポンとなでているのも印象深い。そして、毎回内容が変わるラストのセリフで久保田は、「ここまで信じてついてきてくれて、本当にどうもありがとう!」と涙をこぼしながら、深々とお辞儀をし、感謝を述べる。気が早いかもしれないが、この時点で、武道館公演は成功する、そう確信していた。

若井友希

久保田未夢

「みんなー、ついに来たぜ、にっぽんぶどーかーーーん! 今日は世界で一番熱い夜にしようねー!」。間髪入れずにリーダーの山北が叫ぶ。それぞれのカラーのサッシュベルトやソックスを身に着け、ゴールドやシルバーを差し色に白を基調とした衣装のi☆Risが2曲目に届けるのはデビュー曲の「Color」。"きっと(高く高く)飛べば空まで届く 大きなこの世界 今キミのもの"。アーティストの聖地・武道館にとうとうたどり着いたi☆Ris。いま、武道館はi☆Risだけのものだ。そう言わんばかりの歓声が場内を包む。続く「ミラクルパラダイス」は諦めず夢に向かっていくアイドルたちを描いた楽曲。キャノン砲からは銀色の紙テープが発射され、すでにボルテージはマックスだ。

3曲ぶっ続けたあと、恒例の自己紹介を兼ねたMCタイムをはさみ4曲目は「YuRuYuRuハッピーデイズ」。ライブ仕様の雨音のイントロから始まり、片手に持ったピンク色の傘を使用したパフォーマンスで魅了していく。ラブラブなカップルの日常を描いた本楽曲は、途中の若井(女)と澁谷(男)による掛け合いが特徴的。「急いでばっかじゃいろいろ見逃すぞ」、「いろいろってなんだよ」、「んー、えっと、みんなの家族が来てくれたりとか、デビュー当時のスタッフさんが観に来てくれたりとか」、「いつもありがとうございます!」と小芝居も武道館仕様に。

澁谷梓希

そして、雨は上がり晴れ間がのぞくと、側転や馬跳びなどのアクロバティックなパフォーマンスで釘付けにする「徒太陽」へとシフトしていく。武道館公演前日の11月24日は、観測史上初めて11月に積雪のあった日。雨と雪に襲われていた武道館も、当日にはすっかり晴天に。そんな現実とのシンクロも感じさせる一連の流れだった。

ここで、会場は暗闇に包まれi☆Risは一旦退場し、センターモニターに注目。『プリパラ』よりファルルからのビデオレターが到着し、本編を切り貼りした映像が流れていく。「今日はらぁらたちが武道館でライブをしているんだよね。すごいなー。ファルルも行きたかったなー。らぁら、みれぃ、そふぃ、シオン、ドロシー、レオナ……武道館ライブ、本当におめでとう! みーんなキラキラ輝いているよ。今日はそっちにいけないけど、プリパリからまほちゃんやふわりと一緒に応援してるからね。ねえ、らぁら……お願いがあるの。らぁらたちが聴かせてくれた、心がポカポカキラキラするあの曲、歌ってほしいな。みんな、がんばってのかしこまっ!」。

ファルルからのエールとリクエストを受け、再びステージに舞い戻るi☆Ris。「みんなの想い、受け取ったよ。みんなで歌おう、世界中に届くように」と本編でのセリフアレンジを茜屋が発し、「Love friend style」を歌唱していくのは『プリパラ』でのユニット、SoLaMi Dressingだ。「みんなのことが大好きぷり~」、「みんな、これからもイゴよろしく!」とそれぞれキャラクターをステージに降臨させながら、虹色のランウェイを渡りミニステージへ移動していく。

舞台を花道へと移し、「ここからは雰囲気を変えて、デビューから4年経って、みんな20代になったi☆Risの大人の魅力を見て欲しい」と芹澤がコメントし、6本のマイクスタンドが用意される。送る曲は「Defy the fate」。「i☆Ris 1st Live Tour 2015 ~We are i☆Ris!!!~」(2015年4~5月開催)での朗読劇の後や、「i☆Ris 結成4周年Live~foooour~@i☆RisTELLARTHEATER」(2016年7月開催)での若井の伴奏による披露など、i☆Risがここぞという時に聴かせる大切な一曲だ。それぞれのカラーで彩られたスポットライトをその身に浴び、しっとりと表現していく。

その勢いのまま、武道館のためだけに作成したアレンジバージョンの『イチズ』へ。メンバーのいるミニステージがせり上がり、2階席の目線の高さまで上昇していく。途中、芹澤が涙をぬぐい、茜屋が目をうるませていく。澁谷がメンバーの涙に引っ張られそうになるも久保田がカバーをするというチームワークを見せつけてくれた。初の武道館、感慨深さという魔物がすぐそこまで迫ってきている兆候はあるが、このメンバーなら心配はない。歌唱力の面でもパフォーマンスが落ちることはなく、落ちサビでの茜屋の力強さと、フェイクで表現する若井が観客を圧倒していく。ミニステージは下降し、「鏡のLabyrinth」をライブ初公開。歌唱後、「私たちの心境に当てはまる曲だと思いました。"たとえこの先は 一人きりでもね みんな同じ想いで ゴールを目指しているんだ"。i☆Risは個性バラバラだから、一人ひとりはやりたいことは違っていても、みんな集まれば一緒だよという思いが詰まっています」と山北。

お次は、山北からの「みんな騒ぎたいでしょ、血の気を出して! 血液濃度、濃くなっていると思うので、みんなの血を吸っちゃいたいと思いまーす」と、10曲目は吸血鬼をイメージしている楽曲の「Vampire Lady」。2番の途中から舞台をランウェイへと移し、客席を煽りまくる吸血鬼ガールたち。その勢いのままメインステージへと戻り、続けて披露した「Re:Call」では8本の炎をあげる特殊効果によってMVを再現していく。武道館公演もそろそろ中盤戦だが、まだまだ休むことは許されないとばかりに炎を連続させていく。