『心が折れる職場』(見波利幸 著/日本経済新聞出版社: 税込918円)

社会人の多くは会社に勤めて仕事をすることで給料をもらっている。仕事や人間関係がうまくいっていれば毎日の生活は楽しいものになるが、「仕事がつらい」「人間関係に悩んでいる」などのストレスに悩まされだすと、途端に職場が「地獄」と化す。そんな状況下で日々を過ごしていれば、ある日突然、自身の心がポッキリと音を立てて折れてしまっても不思議ではない。

『心が折れる職場』(見波利幸 著/日本経済新聞出版社: 税込918円)では、「心が折れやすい」職場や人の特徴を日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事などを務める著者が具体的に説明している。

自発的な飲み会がないと危険

職業柄、数多くの研修やカウンセリングを重ねてきた著者は、メンタル面が不調になる人が多く発生する職場にはいくつかの共通点があると指摘する。例えば、「自発的な飲み会」がない職場は精神に不調をきたす人がよくみられるという。

「2~3人の小さなグループでもいいのですが、自然と『飲みに行こう』と声をかけ合える職場は、ふだんから気兼ねないコミュニケーションがあります」と綴る筆者。このように仲間内で気軽に飲み会に誘える雰囲気があれば、雑談を含め、仕事のことも仕事以外のことも職場の人たちと話せる空気が醸成されている可能性が高い。

こういった「何でも話せる」という職場の空気や雰囲気は、トラブル時の「皆に助けを求めることができる」という安心感につながるため、不調者が出にくくなると記されている。

「頭がいい人」も困りもの?

「頭がいい人」がそろう職場にもトラブルが潜むという。知的労働に携わる職場で働く人は物事を理詰めで考える傾向が強くなるが、それが度を過ぎるとメンタルヘルスを損なう人が増えてくると筆者は警鐘を鳴らす。

「あえて乱暴な表現をすれば、『頭のいい人』がそろっている職場ほど、メンバーのメンタル面での問題が多くなる傾向があるのです」。

いわゆる「体育会系組織」の方がタフなメンタルを求められると考えがちかもしれない。だが、ピンチになったら「私にすべて任せなさい」と言ってくれる人や、サポートの名乗りをあげる人がいてくれそうなのも体育会系組織ではないだろうか。

「頭がいい人」がそろう職場では、感情を表に出すことに気恥ずかしさを覚える傾向が強いため、ピンチ時の助けが得られにくいそうだ。そのため、独りで問題を抱えやがて限界に達する――といった状況につながってしまう。社員のメンタル面をケアする制度の充実よりも、組織的なルールに厳格な方が心的不調につながりやすいとのこと。