――最初の登場シーンでは恐怖しかありませんでしたが、今回の『Season3』では思わず笑ってしまうことも。

キャラクターの存在が「楽しみ」になっていったということですね。ただ、「恐怖」もどこかで引き出さなければいけない。悪いことをやり続けていると、そのこと自体に面白味が生まれてくるので、そのバランスはきちんと取らないといけません。

パチンコ依存の債務者の手をドアでつぶすシーンが『Part2』にはありましたが、実は台本にはなかったんです。現場に向かっている時に思いついて、すぐに助監督たちに伝えました。登場できちんと恐怖を植え付けておくことが必要があるんだと。

メアリーは体幹がすごくしっかりしていて、そういう面でも役柄に合っていました。債務者を金属バットで殴るシーンがあるんですが、腰の入り方がいいんですよね。躊躇なく振り抜いてしまう狂気がそこから生まれます。

今だから褒めたい「女優・高橋メアリージュン」

――高橋さんは、山口監督がきちんとダメ出しをしてくれることをとてもありがたがっていました。そんな山口監督から、お褒めの言葉をいただきたいのですが(笑)。

やっぱり真面目なところですかね。一緒のシーンが多いマキタスポーツさんとも雑談もしていないで集中しているようで。きっと、役に入っていくためのストロークを取ろうとしているんでしょう。犀原は丑嶋にとっての「脅威」でなければいけない。そのための努力が彼女からは伝わってきます。それは、「女優・高橋メアリージュン」の魅力の1つだと思います。

『Part2』以降、自由に演技をしていても犀原の根幹となる部分は変わらない。彼女は犀原と同化する術を熟知しているので、僕から大きく芝居をつけることはなく、わりと自由にやってもらっていました。

撮影:ヤマシタチカコ

――今後、どのような役で彼女を起用してみたいですか?

彼女の魅力がどのような時に生きてくるのかは、言葉ではなかなか説明しづらいのですが……犀原と同じような「当たり役」を見つける予感はあります。

――スピンオフの可能性は? 個人的には何としても実現してほしいのですが……。

そうですね(笑)。今はシリーズが完結したところなので……しばらくして、そういう時期がくれば考えてみたいと思います。

――ここまで役の虜になるのは初めてのことなのですが、自分でも何がそうさせているのかうまく説明ができず……。ひょっとして、これが村井の感情なのではと思ったりします。

犀原はわりと女性ファンが多いみたいですね。丑嶋は社会や人間の行き方を「警告」する者。犀原も同じような警告者なので、「警告してほしい」ということでは?(笑) 「それでいいのか?」と詰められたい欲求。アンチヒーローならではの感情だと思います。

僕がオーディションにこだわる理由は……オーディションをやらなければ、「犀原茜」は成立しなかった。名のある俳優を指名したり、集められたプロフィールから決めたりするのもいいとは思うんですけど……単純に、面白くないなと(笑)。オーディションではいろいろな役をやってもらって決めていくこともありますが、どんな作品にも作品を成立させる上で「絶対に外せない役」というのがあります。そういう場合は、メアリーのように何度も足を運んでもらうことになるわけです(笑)。

――そろそろお時間です。今はシリーズが完結してしまった寂しさでいっぱいです。なんとかスピンオフをお願いします!

そうですね。機会があれば(笑)。

■プロフィール
山口雅俊
兵庫県神戸市出身。フジテレビのプロデューサーとして、『ナニワ金融道』シリーズ(96年~/フジ)、『ギフト』(97/フジ)、『きらきらひかる』シリーズ(98年~/フジ)、『カバチタレ!』(01年/フジ)、『ロング・ラブレター 漂流教室』(02年/フジ)、『ランチの女王』(02年/フジ)、『ビギナー』(03年/フジ)など数々のユニークなドラマを手掛ける。2005年に独立し、株式会社ヒントを設立。『カイジ 人生逆転ゲーム』(09年/佐藤東弥監督)、『カイジ2 人生奪回ゲーム』(11年/佐藤東弥監督)を企画・プロデュース。『スマグラー おまえの未来を運べ』(11年/石井克人監督)、『ひみつのアッコちゃん』(12年/川村泰祐監督)では企画・プロデュース、脚本を手掛ける。深夜連続テレビドラマ『闇金ウシジマくん』シリーズ(Season 1、2)(10年、14年/MBS・TBS)で企画・プロデュース、演出を担当。映画版『闇金ウシジマくん』(12年)『闇金ウシジマくん Part2』(14年)でも企画・プロデュース、脚本を手掛けるとともに監督を務めた。

(C)2014真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん2」製作委員会
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