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赤ちゃんができると、「胎教」のこと、気になりますよね? どんな音楽を聴かせたらいいのか、どんな音楽なら将来音楽好きな子どもに育つのか、気になるところです。胎教によい音楽って、本当にあるのでしょうか。今回はEn女医会の産婦人科専門医・間瀬有里先生にお聞きしました。

赤ちゃんはいつ音を聴き始めるのか

ーーそもそも、お腹のなかで、妊娠初期の赤ちゃんは本当に人の話し声や音楽を聴いているのでしょうか

実際に妊娠初期の胎児の耳に、音楽が、わたしたちが思う「音」として伝わっているのかどうかは、はっきりわかっていません。

ーーでは、いつごろから胎児は耳でものを聴くようになるのですか?

中枢神経が発達してくる、妊娠5カ月ころといわれています。しかしこれも、音を直接聴くというよりも、羊水を通じて振動を感じることで「全身で聴いている」ようです。信号としてとらえているようですね。とくに、母親の声は聞き分けているといわれていて、母親が話しはじめると胎児の心拍数が上がる、というデータもでているようです。

大切なのは母親の精神安定

ーー赤ちゃんのための胎教というのは、親の思い込みなのでしょうか

まったく意味がないものとは思いません。健康的な妊娠生活は、母体がいかにリラックスできているかによります。つまり、母親が心地よく感じているものは、胎児も心地よく感じていると考えてもおかしくはありません。「胎教」という字をみると、いかにも赤ちゃんのために、というイメージがわきますが、母親のリラックスのための音楽が、自然と赤ちゃんのためにもなる、くらいに気軽に考えたほうがいいのではないでしょうか。

ーーつまり、母親が好きな音楽を聴くのが一番いい?

そうかもしれませんね。音楽を聴くと、その音楽を聴いていたころのことを思い出し、ほっこりとした気持ちになることがありませんか? いい思い出がある音楽や、普段好んで聴いている音楽を聴くのには、赤ちゃんにもよい影響があるかもしれませんね。

ーーよく、モーツアルトの音楽が胎教によい、などといわれますが

脳波によい音楽、という意味では、リラックスできてα波が出るような音楽、ということで、クラシック、とくにモーツアルトの名前がよく上ります。同時に、多くの人がモーツアルトの旋律を心地よいと感じがちなのは事実でしょう。

しかし、音楽の好みは人それぞれです。そもそも母親がモーツアルトでリラックスできない場合には、胎教としてはあまり大きな意味はなさないと思います。どんな音楽で精神的な安定が得られるかは、人によってまったく違います。ですから、より体も心もリラックスできる音楽がロックやR&B、レゲエといったジャンルであれば、「胎教」にこだわらずその音楽を楽しむ、ということが実は効果的なのかもしれませんね。

ーー大音量で聴く、というのは危険ではありませんか?

それは悩むところですね。パンクやヘビメタ系の音楽が好きで聴くのはかまいませんし、大きい音で聴いたほうがリラックスできるというのであれば、あえてとめません。しかし、大音量で聴く場合にはアドレナリンが放出されて、興奮状態にあるともいえて、リラックスというよりは戦闘モードに入っているといったほうがいいかもしれませんね。体を休めたほうがいい時期には、音量はすこし控えめにしたほうがいいかもしれません。あくまでも趣味の範囲で、ストレス発散の目的で楽しまれるのであれば問題ないと思います。

ーー母親が、自分の気持ちで決めればいい、と

そうです。音楽は趣味の領域のものですので、制限する必要はありません。趣味の制限はストレスにつながりますから。ただ、妊娠中は、趣味嗜好が変化するものです。妊娠前とまったく同じ音楽をまったく同じふうに楽しめるかどうかはわかりません。落ち着いて様子を見ながら、そのときに聴きたいものを楽しめば、それでいいと思います。

ーー音楽好きの子どもを育てる胎教があるかないかといえば…?

あるとはいい切れません。どちらかというと、生まれたあとに、どれだけ音楽に触れる環境で育つかどうかのほうが、そういった部分を左右するのではないでしょうか。

ーーありがとうございました!
■プロフィール
間瀬有里
2003年 日本医科大学卒業。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加するEn女医会に所属している(En女医会とは、会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用し、医療分野での啓発活動を積極的に行っている団体)。
産婦人科専門医、指導医。医学博士。大学病院助教を経て、現在、東京ミッドタウンクリニック勤務。長年の大学病院勤務経験を生かし、現在は健診業務から一般外来診療まで幅広く対応している。二児の母としても、日々奮闘中。