喜びの核となる技術とは

そして今回の2代目NSXも、まさしくホンダが考える新しいスーパースポーツ像を具現化したものだ。もっとも特筆すべきは、ターボエンジン、3モーター、9速DCTの3つを核とする「スポーツハイブリッドSH-AWD(Super Handling All-Wheel Drive)」である。

開発初期においては、「新たな走りの喜び」をどういうパッケージで構築するかが検討されたが、この方向性で行くことが決まったのが2011年の終わり頃の話だという。

これはエンジンとミッションの間に配したリアモーターがターボラグを補いつつ、フロントに配したツインモーターユニットが左右輪を独立して駆動力を制御するとともに、抵抗に差をつけることで減速時のトルクベクタリングを可能としたというものだ。

ホンダはかねてから「ダイレクトヨーコントロール」に力を入れており、1996年の「ATTS」(プレリュード)や2004年の「SH-AWD」(レジェンド)などを実用化してきたが、今回のスポーツハイブリッドSH-AWDはモーターを用いているのが特徴で、より高度な制御を実現している。

エンジンの置き方を変更する大きな決断も

一方で動力性能についても、目標をどこに設定するかについて大いに議論がなされた。エンジン形式についてはV6でいく方針を固め、V8以上にはしないことを早い段階で決めたものの、自然吸気のままでNSXとしてのステップアップを果たせるのかと自問し、すでに世にあるスーパースポーツに比肩するパワーが必要との考えから、V6のままパワーを上げるべくターボチャージャーの装着に踏み切った。

エンジンルームには3.5リッターV6DOHCツインターボエンジンが積まれている。スペックはモーターを合わせたシステム最高出力で581ps(427kW)、同じくシステム最大トルクで646Nm(65.9kgm)だ

すると当初予定していた横置きでは冷却の問題が解決できないので、エンジンを横置きではなく縦置きにする必要が出てきた。これは文字にすると簡単そうに感じるが、非常に大きな決断であり、あるところまで開発が進んでいたものが、ゼロに近いところからの再スタートとなった。それが2013年のことだ。