住宅ローンを組んでマイホーム購入を検討中だけど、返済途中に病気などで働けなくなったらどうしよう、と心配な人もいることでしょう。通常は、ローンを組んだ人が万一亡くなったり高度障害状態になったりしたときに保険金が下りる団信保険に加入しますが、この団信保険に病気で働けなくなったときの保障も付いたタイプが注目を集めています。

「医療系団信保険」って?(画像はイメージ)

万一のときに住宅ローン返済の心配がいらない団信保険の仕組みとは?

住宅ローンを組むときに加入する「団体信用生命保険」。略して「団信」といわれているこの死亡保障の保険は、ローンの返済中に契約者が万が一亡くなったり高度障害状態になったりしたときに、残りの借入額分を保険金で一括返済してくれるという仕組みの保険です。銀行の住宅ローンを組むときには、必ず加入することになっています。

マイホームを購入するときには数千万円という高額のローンを組むのが一般的ですので、万一に備えたこのような保険に加入しておくのは安心です。フラット35の場合は任意加入となっていますが、他の保険で住宅ローン分の保障をきちんと確保できていない人は、団信保険に加入した方がいいでしょう。

この団信保険のおかげで、住宅ローンを組んだ契約者が亡くなったときや高度障害状態の場合でも、以後の返済負担なしにマイホームを残すことができます。しかし、病気などで働けなくなったときにはこの保険の保障対象とはならないので、収入が激減した上にローン返済を続けなければならず、深刻な状況になる可能性があります。万が一そのような状況でローンの返済ができなくなってしまうと、最悪な場合、マイホームまで失ってしまうことにもなりかねません。

住宅ローンを抱えている働き盛りの世代は、死亡リスクももちろんですが、このような病気などで長期的に働けなくなるリスクの方がより深刻ともいえます。そうしたリスクにも対応できるのが「医療系団信」と呼ばれる団信保険です。

病気やけがで働けなくなったときに保障が受けられる

医療系団信と呼ばれる団信保険は、いくつかの種類がありますが、大きく分けると以下のような3つの種類があります。

【医療系団信の種類】
1. がんになったと診断されたら残りのローン分の保険金が下り、残債の返済に充てられるもの
2. 3大疾病により一定の状態と診断された、または所定の状態になったときに残りのローン分の保険金が下りて残債の返済に充てられるもの
3. 7~9大疾病により所定の状態になったときに残りのローン分の保険金が下りて残債の返済に充てられるもの

保障の範囲が「がん」に限られているか、心筋梗塞や脳卒中など他の病気もカバーしているかというのは大きな違いです。リスクを幅広くカバーする意味では、対象となる病気の範囲が広い方が安心といえます。

ただし、保険金が受け取れる基準は、病気の種類によって細かく規定されています。保険によってもその基準が異なりますので、内容をしっかりと理解した上で加入するか慎重に検討しましょう。

加入するときの注意点は? どんな人が入った方がいい?

これらの医療系団信は、通常の団信に病気になったときの保障を上乗せしたものですので、当然のことながら通常の団信よりも保険料の負担は高くなります。保険料はだいたいローン残高の0.1~0.3%程度。3,000万円の借り入れだと当初は月に2,500~7,000円程度になります。これだけの負担をしても必要と考えるかどうかが、加入するしないの判断ポイントになります。

家系的に特定の病気のリスクが高いとわかっている場合には、多少のコストを負担してでも加入しておいた方が安心でしょう。

がん保険や他の医療保険に自分で加入しているから入らなくても大丈夫と思う人も多いと思いますが、保障の意味が違うので安心とは一概にはいえません。一般的ながん保険や医療保険では、治療や闘病にかかる費用の保障が主眼となっているため、住宅ローンを含めた生活費をカバーすることはできません。

万が一重い病気で働けなくなったときに、生活費の中で最も比重が高い住宅ローンの返済を免除してもらえば、マイホームを失うこともなく何とか生活ができるという見通しが立てられるのであれば、医療系団信に加入する意味もあると思います。

これらの医療系団信は、銀行によって取り扱っている種類が異なります。住宅ローンを借りようと思っている銀行でどんな種類の医療系団信を取り扱っているのかよく確認した上で加入を検討しましょう。

※画像は本文とは関係ありません。


堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。