ビルの谷間にたたずむ歴史的建造物

2件目の「札幌市時計台」は、北海道庁から徒歩約5分。白い壁と赤い屋根が青空に映える姿は、観光ガイドなどでもおなじみだ。現地を実際に訪れると、レトロな建物がビルの谷間に埋もれているように見えてかわいそうな気もするが、周囲の高いビルが北海道の厳しい風雪から時計台を守っているのだという。

時計台で一番の名物は、毎正時に「カーン、カーン」と響く澄んだ鐘の音だろう。現役で活躍している塔時計としては日本最古のものだ。1878(明治11)年、北海道大学の前身・札幌農学校の演武場(屋内体育館兼講堂)として建てられ、その3年後の1881(明治14)年に塔時計が設置された。135年前の時計が、今でも正確に時を刻み続けているとは驚きだ。

札幌市時計台は高さ約20m。向かいのビルの2階テラスから正面を撮影できる

豆知識好き必見の1階資料室

1階の資料室では、時計台や札幌農学校の歴史、時計台修復の様子などの解説パネルが展示され、時計台の外壁の色の移り変わりといった豆知識も学べる。

時計台限定グッズが買える売店や、時計台で撮った画像とメッセージをパソコンに登録できる「思い出アルバム」のコーナーもあるので、記念に立ち寄ってみてもいいだろう。

時計台の歴史を学べる1階展示室。解説パネルは文字が大きくて見やすい

人力で巻き上げる重りが塔時計の動力

2階には時計台と同じ塔時計の機械を展示。時計台の文字盤は直径167cm

館内2階では、時計台で使用されているのと同じアメリカのハワード社製の時計機械(1928年製)を展示。毎朝9時15分から約10分、この兄弟時計を使って重りの巻き上げ実演と機械の説明も行っている。動力は電気ではなく、手動のハンドルで巻き上げる重りだ。実際に時計台の時計を動かしている方の機械の重りも、週に2回、人の手で大切に巻き上げ続けている。時計の針を動かす50kgの重りは56回、鐘を打つ装置の150kgの重りは125回もハンドルを回して巻き上げると聞くと、歴代の保守要員の人たちの苦労にしみじみと頭が下がる。

ちなみに、重りはハト時計のような分銅ではなく、小石を詰めた木箱だ。万が一地震などで重りが外れることがあっても、小石がバラバラに散らばれば、建物に大きな損傷を与えずに済むからだとか。札幌市内を流れる豊平川で明治時代に採取した小石を、平成の今も使い続けているという。川の流れで丸くなった石が、時の流れを伝える塔時計を動かし続けているとは、なんともロマンチックな話だ。

●information
札幌市時計台(重要文化財 旧札幌農学校演武場)
住所: 北海道札幌市中央区北一条西2丁目
開館時間: 8:45~17:10(最終入館17:00)
休館日: 年始(1月1~3日)
入館料: 大人200円、高校生以下無料
※「札幌市時計台」「さっぽろテレビ塔」共通入場券は大人800円