続いて、歯列矯正をしているときに注意すべき点をまとめた。

■歯磨きは通常よりも念入りに

歯列矯正中は、歯を移動させるためにブラケットやワイヤーが装着された状態になる。そのため、食べカスがたまりやすくなってしまうので、通常よりも念入りな歯みがきが必要。矯正治療中に虫歯になってしまうと、いったん矯正治療を中断して虫歯治療をしなければならなくなる場合もあるので、歯科衛生士や歯科医師の指導に従って丁寧に歯みがきをするようにしたい。

■運動時には口元への衝撃に注意

歯列矯正中は装置を口内に装着した状態になるため、スポーツ時には注意が必要。口元に強い衝撃が加わると、装着している装置によっては口腔(こうくう)内のケガを招く場合があるからだ。ただ、スポーツ専用のマウスピースなどもあるので、趣味や部活動などで体を動かしている場合は、矯正歯科医に相談するとよい。

■保定装置を正しく使用する

矯正装置を外した後は、矯正した歯が戻らないように保定装置(リテーナー)を装着する必要がある。自分で取り外しができる装置で、「週に2~3回」「夜間のみ」といったように24時間付けておく必要もないため、しっかりと医師の指示に従って装着するようにしたい。「煩わしいから」と装着の頻度を勝手に少なくしてしまうと、せっかく矯正した歯列が戻ってしまうので気をつけよう。

適切な時期は個人で異なる

歯列矯正の前に準備が必要な場合もある。あごの面積に対して歯が大きすぎると、歯を正しく並べるためのスペースが確保できない場合がある。成長期であれば、あごの骨を大きくする装置を利用し、あごが大きく成長してから矯正治療をすることが可能だ。だが成人の場合は、骨の成長が止まっているため、抜歯してスペースを確保するしかない。健康な歯の抜歯には抵抗を感じるかもしれないが、正常な歯列によって得られるメリットをよく検討して矯正治療をするかどうかを決めていきたいところだ。

もちろん、虫歯などがある場合は治療をしてから矯正治療をしていくことになる。虫歯により神経を抜いていたり、差し歯やブリッジなどがあったりする場合も、歯根に問題がなければ矯正治療は可能なケースが大半だ。ただ、ブリッジや差し歯は作り直しが必要になる場合もある。

歯列矯正のタイミングについては、若いほうが歯列の動きがよいため早期にしたほうがいいとされている。だが実際は、歯だけでなく骨も関係してくる問題のため、幼児期や子供の頃は矯正歯科医による経過観察をしながら処置を行うことになる。

あごの成長を見ながら処置を行う早期治療を経て、永久歯が生えそろってあごの成長がある程度予測できるようになった段階でブラケットやワイヤーを装着する本格治療をしていく。その時期は個人個人で異なってくるので、矯正歯科医としっかり相談していきたい。

3食後の歯みがきと歯科検診の徹底を

歯並びを悪くしないためには、3食後の歯みがきの徹底と定期的な歯科検診が何よりも重要。虫歯や歯周病によって歯が抜けてしまうと、その周りの歯が傾斜したり移動したりすることで適切なかみ合わせが得られなくなる。子供の場合、早期治療が重要な役割を担うケースもあるので、状態を把握するためにも歯科検診はきっちりと受けるように心がけたい。

歯列矯正は見た目の改善だけでなく、健康面や美容面でもさまざまな恩恵が得られる。治療を開始したら医師の指導や指示をしっかりと守り、快適で美しい歯の健康を得るようにしていきたい。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 今村美穂(いまむら みほ)

M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長、MIHO歯科予防研究所 代表。表参道デンタルオフィス 矯正歯科。日本歯科大学卒業、日本大学矯正科研修、DMACC大学(米アイオワ州)にて予防歯科プログラム作成のため渡米、研究を行う。1996年にDMACC大学卒業。日本矯正歯科学会認定医、日本成人矯正歯科学会認定医・専門医。研究内容は歯科予防・口腔機能と形態及び顎関節を含む口腔顔面の機能障害。MOSセミナー(歯科矯正セミナー、MFT口腔筋機能療法セミナー)主宰。