食器洗いの時間を短縮できれば……そんな願いに「食洗機」は応えてくれる(写真はイメージ)

ロボット掃除機、自動洗濯乾燥機と並んで、子育て世帯必須の時短家電"三種の神器"と呼ばれているのが「食洗機」だ。食器をセットするだけで、洗いからすすぎ、乾燥までを自動で行ってくれるものだが、1分1秒もムダにできないほど忙しい子育て世帯にはぜひとも最優先で導入を検討してもらいたい家電のひとつである。

しかしながら、食洗機は買ってそのまま置くだけで使えるものではなく、導入には少々ハードルのある家電でもある。そこで今回は、食洗機を購入する際に知っておきたい基礎知識を解説したい。

食洗機は給排水の施工が不可欠

水を使って洗い流す仕組みの食洗機は、洗濯機同様、水を引き込むための水栓をつないで、排水のための出口が必要である。食洗機の場合、キッチンへの設置が基本だが、一般的にはキッチンの水栓を分岐し、一方を食洗機側につないで水を引き込めるようにする。排水は本体に接続されたホースからシンクなどに排出する場合と、排水溝に直接つなぐ場合と、食洗機のタイプによって異なる。

そして、食洗機には"ビルトイン"と"据え置き型"の2タイプがある。タイプによって大きさや価格が異なるの事前に把握しておきたい。

"ビルトイン"はすっきり収納型

まずビルトインは、システムキッチンのキャビネット(引き出し)部分やシンク下などに一体化させて取り付けるタイプ。簡単に言うと、"内蔵"型だ。メリットは何と言っても見た目がスッキリすること。台の上などに外付けしなくても、システムキッチンにピッタリと収まるため、本体のスペースを取ることがない。

"ビルトイン"食洗機のミーレ「G 6100 SCU」。国産メーカーの食洗機に比べると容量が大きく、大きな鍋やフライパンなども入れられるのが特長

ただし、給排水用に内部の配水管から直接ホースをつながなければならないなど、素人の設置は難しい。失敗すると水漏れなどの大きなトラブルの原因となるため、専門の業者に取り付けをしてもらうのが基本。工事費や出張費などが必要となるため、当然ながら本体価格以外にも別途費用が必要になる。ちなみに、施工費は3~4万円程度が相場だ。また、本体自体も8万円前後からが相場で、据え置き型よりも高めの傾向にある。

"ビルトイン"食洗機のパナソニック「K7シリーズ」

さらに重要なポイントは、設置には工事を伴うことから、賃貸住宅の場合には大家さんの許可が不可欠であること。退去時に原状復帰を求められるほか、無断で工事をしてしまうとトラブルの原因になりかねないので注意が必要だ。なお、ビルトインの価格については取り付け業者を経由して買う場合が多いため、実勢価格はかなりバラつきがある。

"据え置き型"はリーズナブルだが場所をとる

これに対し、据え置き型はいわば"外付け"のタイプだ。給水はキッチンシンクの蛇口に分岐栓と呼ばれるパーツを取り付け、食洗機の給水ホースを接続するだけなので、DIYに慣れている人なら工具さえあればセルフ工事も十分可能だ。ただし、蛇口のタイプにあった分岐栓を取り寄せるなどひと手間もあるので、本体購入時に取り付けサービスまでを依頼することも可能だ。

価格も5万円前後からとビルトインタイプよりもリーズナブル。しかし、本体サイズが小さいものでも幅と高さが50cm程度、奥行きが30cmほどあり、設置の際にはそれなりのスペースが必要だ。

"据え置き型"食洗機のパナソニック「プチ食洗 NP-TCR3」(実売価格: 税込4万6,200円前後)

ちなみに、ビルトインタイプはパナソニック、リンナイ、ハーマンの国内3大メーカーの他に、ドイツのミーレなど海外メーカーのものも手に入る。その一方で、現在国内で一般に流通している据え置き型の食洗機はパナソニック1社のみで、製品の選択肢は限定される。

食洗機を使うメリットは時短だけにあらず!

食洗機のメリットは、第一に食器洗いの手間から解放されること。食後に食器を手洗いする必要がなく、その後の時間をゆっくりと過ごすことができるのは何よりもありがたい。それに加えて、食洗機は実は手洗いよりも水道代の節約にもなる。食洗機の中で食器をまとめて一度に効率よく洗うことにより、使用水量は手洗いよりも断然少なくて済む。

また、70~80度という手洗いではやけどをしてしまうような高温のお湯で洗いやすすぎを行うため、汚れ落ちも断然いい。もちろん、熱による殺菌もでき、手洗いよりも衛生的だ。湯沸かしや乾燥の際に電気代がかかってしまうものの、食洗機用の洗剤は手洗い用よりも強力な成分であるため、その分洗浄効果も高い。

食洗機では熱による殺菌もでき、手洗いよりも衛生的だ(写真はイメージ)

これ以外にも、筆者の経験上長所と感じているのは、食器や調理器具を躊躇(ちゅうちょ)なく使えることだ。手洗いの場合、洗う点数を減らすために、使用する調理器具や食器を厳選したくなるものだが、食洗機があれば洗い物の点数が増えても気にならず、食洗機に対応したフードプロセッサーなどの便利な調理器具をためらわずに駆使することができ、調理自体も時短でラクにできるようになる。

また、乾燥まで行ってくれるので、運転終了後にすぐにそのまま食器棚などへしまうことができるのもメリット。洗った後、拭いたり乾かしたりする必要がないため、キッチンシンクの周りも散らかりにくい。

予洗いが必要なケースがあっても確実に楽できる

もちろん、食洗機と言えども必ずしも完璧というわけではない。食器のセットの仕方や量、汚れの度合いによっては、汚れが残っていたりすることもあるため、予洗いが必要な時もあれば、アルミ製品や塗り物の食器など食洗機で洗えない素材のものもある。

頑固な汚れがある場合は、予洗いしてから食洗機へ(写真はイメージ)

しかしながら、そうした欠点を差し引いても食洗機の導入による日々の家事負担の軽減は計り知れないほど大きい。食事が終わった後に食器を桶に漬け置いておいて、後は寝る前にセットするだけで翌朝にはキレイになっているので、食後はゆっくりと家族との時間を過ごしたり、他の時間に充てることができる。

洗う手間を考えなくても済むので、お料理そのものも気楽に大胆にでき、気分的にも楽しくなる効果もあり、食洗機は子育て世帯にとっては総じて費用対効果の高い家電だ。上記の注意点を参考に、ぜひとも導入を検討してみてほしい。

※記事中の価格は2016年9月2日現在のもの