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香りを空間に散布したり、リネンにつけたりして楽しむアロマテラピー。これは妊娠中に楽しんでも問題ないのでしょうか。今回はEn女医会の産婦人科専門医・間瀬有里先生にお聞きしました。
アロマテラピーってどんなもの?
ーーそもそも、アロマテラピーとはどんなものなのでしょうか?
文字通りアロマ(芳香)を使ったテラピー(療法)のことで、植物の香りやその他の様々な効能を利用して、心と体の問題点を解消し、健康や美容に役立てるのを目的にしたものですね。リラクゼーションやストレスケア、疲労回復などに効果があるとされています。薬で症状を治していく西洋医学的な考え方とは異なるものです。
ーー妊娠中は、なにかとストレスもたまりがちかと思いますが、それを癒やすためにアロマを楽しんでも良いのでしょうか?
確かに、アロマの香りは精神的にだけでなく肉体的にもリフレッシュするために効果的かもしれません。しかし、妊娠中には注意すべき点もたくさんあるんです。
使い方には注意が必要
ーー注意すべき点とは?
アロマテラピーに使う精油のなかには、妊娠をしている女性には不向きなものもあります。生理不順を改善したり、ホルモンバランスを整えたりするために開発された精油も多いのです。それらを妊娠中に使うと、ようやくでき始めた妊娠のためのホルモンバランスを崩してしまう可能性が(特に妊娠初期には)あるからです。
ーー妊娠初期にはどのように注意したらよいでしょう
そもそも、妊娠するとにおいに非常に敏感になることが多いんですね。ですので、いつも使っているコロンやアロマオイル、お香などでも、急に心地よく感じなくなることがあります。
かいでいて不快な気持ちのするものは避けること。そして、もしアロマを楽しむのならば、体に直接塗るのではなく、空間の香りを楽しむ程度にアロマの量をおさえたほうがいいでしょう。ただ、その場合であっても一日中香りを家の中に広げておくのはおすすめできません。さらに、妊娠中に使っても問題のない香りを慎重に選ばなくてはなりません。
要注意のアロマオイルは?
ーー具体的にはどんなものを避けたら良いのでしょうか?
あまりにも多くのアロマオイルがありますし、何種類かを配合しているものがあるのでこれがNG、これは大丈夫、と言い切るのは難しいのですが……。基本、「月経を起こしやすくするもの」と「ホルモンの分泌を促すもの」は避けるべきですね。流産しやすくなったり、ホルモンバランスが乱れて胎児の発育に影響を及ぼしたりする可能性がゼロとは言えないからです。
ーー具体的には、どんなアロマオイルがいけないのでしょうか
代表的なのが「ジャスミン」です。子宮の収縮をうながす作用があると言われているからです。逆に、お産の最後の段階には、その効果を発揮するかもしれません。他にも、レモングラス、ラベンダー、ゼラニウム、シナモン、ローズマリー、ミントなど、多くのアロマオイルは、妊娠中は使わないほうがいいとされています。使用する際は、アロマテラピーの専門店やアロマセラピストに相談して慎重に選びましょう。
ーー妊娠中に向いているものもあるのですか?
あります。つわりの時にはグレープフルーツやオレンジ、ベルガモットなどのさわやかな香りがおすすめです。ホルモンの乱れで気分にムラがあったり、イライラしたりする時には、ネロリやベルガモット、レモンなどがいいですね。
ゆったり体を休めたい時には、ローズウッドやラベンダー(妊娠4カ月以降)、サンダルウッド(妊娠4カ月以降)、ティーツリーなどはいかがでしょうか。なかなか陣痛がこない時にはクラリセージ、出産の時には、前述したジャスミンが良いでしょう。
産後の気分の浮き沈みにも、さまざまなアロマオイルが効果を発揮します。ご自分の好みの配合をプロに頼んでみるのも良いかもしれませんね。
ーーありがとうございました!
■プロフィール
間瀬有里
2003年 日本医科大学卒業。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加するEn女医会に所属している(En女医会とは、会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用し、医療分野での啓発活動を積極的に行っている団体)。
産婦人科専門医、指導医。医学博士。大学病院助教を経て、現在、東京ミッドタウンクリニック勤務。長年の大学病院勤務経験を生かし、現在は健診業務から一般外来診療まで幅広く対応している。二児の母としても、日々奮闘中。