課題が露呈したエンディング

もう1点、大きな課題を露呈したのが、番組のエンディングだ。

通常、長時間番組は、終盤に向けて盛り上がりが増し、クライマックスを迎えるエンディングでの感動が約束されているようなものだが、今年はそれもなし。

『スーパーダンク選手権』の出場チームに、Hey! Say! JUMPのメンバーを加えた27人が同競技に挑戦したのだが、アイドルたちが次々に失敗。エンドロールが流れる間の"泣きの一回"でも、高校生が2度失敗したが、それをなかったことにして、最後の1人が強引にシュートを決め、「成功」のテロップを出して締めくくった。

当然ながら、27時間走り切った感動や達成感はなく、あるのは「アイドルと高校生にズルをさせた」という後味の悪さだけ。本来、スタッフと出演者が、失敗を笑いに変えて終わらせるものだが、それができないところに同番組の苦境がある。

思えば、1987年のスタート当初は、『24時間テレビ 愛は地球を救う』のパロディであり、"笑い"という太い軸でエンディングまで大笑いさせてくれた。しかし、2000年代後半ごろから笑いの要素が減り、感動にフィーチャーすることが増え、今年は両方ともほとんど感じられなかった。今後、『27時間テレビ』はどうなってしまうのだろうか…。

亀山社長と松本人志の本音

フジテレビの亀山千広社長(左)とダウンタウンの松本人志

昨年10月、フジテレビの亀山千広社長が「検証というか、もう一度しっかり考えるところに来ている」「やめるという決断は勇気のいることだと思う」と"見直し"の検討に入っていることを明かしていた。

同様に、ダウンタウンの松本人志も同局系『ワイドナショー』で、「毎年やらないといけないのかな。休んでみてもいいのでは?」と提案していた。

大型イベントだからこそ、スタッフの勤続疲労や義務感によるモチベーション低下もあるだろうし、今回の視聴率を見ても、多くの視聴者から支持されていないのは明白だ。視聴者、出演者、スタッフが望んでいないのであれば、打ち切りもやむをえないのだが、果たして本当にそうなのか…。

番組を打ち切るのは簡単だが、その後は『笑っていいとも!』のように、毎年失ったものの大きさに気づかされるかもしれない。分わかっているのは、"見る人"と"出る人"のモチベーションを上げるためには、"作る人"がもっと頑張るしかないということだ。来年、復活を遂げた『27時間テレビ』が見られることを、切に願っている。

『FNSの日』(27時間テレビ)歴代視聴率

1987年:19.9%(総合司会:タモリ、明石家さんま)
1988年:14.0%(タモリ、笑福亭鶴瓶)
1989年:14.7%(タモリ、明石家さんま)
1990年:11.7%(須田哲夫アナ、河野景子アナ)
1991年:11.7%(桂三枝、八木亜希子アナ、有賀さつきアナ)
1992年:19.0%(ビートたけし、逸見政孝)
1993年:17.9%(ビートたけし、逸見政孝)
1994年:13.8%(ビートたけし)
1995年:15.1%(ビートたけしほか)
1996年:14.4%(ビートたけしほか)
1997年:11.6%(ダウンタウン)
1998年:12.1%(中居正広)
1999年:13.3%(中居正広)
2000年:13.9%(中居正広)
2001年:11.4%(※MCリレー)
2002年:11.6%(みのもんた)
2003年:10.3%(みのもんた)
2004年:16.9%(ナインティナイン、中居正広)
2005年:13.0%(笑福亭鶴瓶)
2006年:12.6%(中居正広)
2007年:12.4%(香取慎吾)
2008年:13.8%(明石家さんま)
2009年:13.8%(島田紳助)
2010年:12.6%(島田紳助)
2011年:14.0%(ナインティナイン、中居正広)
2012年:14.1%(タモリ)
2013年: 9.8%(女芸人イレブン)
2014年:13.1%(SMAP)
2015年:10.4%(ナインティナイン、中居正広)
2016年: 7.7%(※MCリレー)

(視聴率の数字は、ビデオリサーチ調べ・関東地区)

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。