「子どもにいったいいくらお金がかかる? 」。子育て世帯やこれから子どもを授かりたい夫婦にとって、お金の問題は避けて通れないもの。実際のところ、子どもひとりを妊娠・出産してから大学を卒業させるまで、一体いくらかかるのでしょうか? 1,000万? 2,000万? それとも3,000万? 妊娠・出産費用や保育園や幼稚園~大学にかかる教育費について、2回に分けて紹介していきます。
保育園・幼稚園~大学卒業は公立と私立とで3倍違う
まずは、保育園・幼稚園から大学卒業までの保育料・教育費のトータルを見ていきましょう。子どもの進路によっても違いますが、文部科学省などが調査した「全国の平均」より紹介させていただきます。
グラフで見ると、公立と私立で教育費が大きく変わることが分かります。例えば、幼稚園(2年)・小・中・高・大学(4年)をオール国公立で計算するとトータル約730万円。幼稚園でなく認可保育園(6年)であれば約850万円。また、幼稚園(3年)・小・中・高・大学(理系4年)をオール私立で計算するとトータル約2,250万円。同じく幼稚園でなく認可外保育園(6年)であれば約2,360万円。つまり、公立と私立では約3倍の違いがあります。
この調査は、小学校から高校までは習い事や塾の費用なども入っていますが、実際は出産費用・子どもの食費・衣類・通信費・レジャー・プレゼント・大学受験料・就職活動費等が必要になってきます。逆に、幼稚園の助成などを含めると、自己負担がもっと少なくなることも多くあります。以下ではもう少し具体的に、出産費用から見ていきましょう。
出産費用の自己負担は約5万円
厚生労働省のデータによると、全国の平均的な出産費用は約47万円。ですが、「出産育児一時金」として42万円が健康保険から支給されるので、平均約5万円の自己負担になります。
妊娠すると週数に応じて、内診や血液検査、エコーといった妊婦検診を受けますが、妊娠は病気ではないため、健康保険が適用されません。しかし、国は原則14回まで妊婦健診費無料化を打ち出しました。無料化の内容は自治体によって違いますので、お住まいの自治体ではどうなっているか制度を確認しておきましょう。他に考慮したいのが、妊婦服などのマタニティ用品・赤ちゃんを迎えるための出産準備品となります。
幼稚園は「子ども・子育て支援新制度」で大きく変化
2014年の文部科学省の調査では、公立幼稚園の費用は年間約14万円、私立幼稚園の費用は年間約36万円ですが、2015年度より「子ども・子育て支援新制度」が導入され、自治体にもよりますが大きく変化しています。例えば兵庫県伊丹市の場合、公立幼稚園の費用は2015年度より所得に関係なく定額だったところから所得に応じた費用になりました。
また幼稚園の場合、「公立と私立幼稚園の費用の差を縮めるために"補助金"がある」「第2子・第3子など多子の場合は軽減される」等、家計にやさしい制度があるのでお住いの自治体に確認をしてみましょう。
認可保育園は家庭の所得によって違う
厚労省の調査によると、認可保育園の1カ月平均保険料は2万491円(年間約24.6万円)です。認可外保育園は下記の通りです。
幼稚園と同じく、「子ども・子育て支援新制度」による影響はあるようですが、保育料が所得に応じて決まる仕組みは以前と変わりません。では実際、所得によりどのくらいの違いがあるのでしょう? 一番多いのは月2万円~3万円ですが、所得が多いと7万円以上になります。
保育料が家庭によって違う理由としては、「1.保護者等の市町村民税の所得割の額の合計額」「2.子どもの年齢」「3.住んでいる自治体」等がありますが、特に1.の所得が保育料に大きく影響します。生活保護世帯や住民税非課税世帯の保育料が0円なのに対して、世帯年収が1,000万円以上だと、保育料の平均月額は子どもひとり当たり7~9万円となります。
また、3歳未満が保育料は高く、4歳・5歳になると保育料は低くなります。これに対して認可外保育園の保育料は、所得には関係なく一律であることが一般的ですが、どんな形態の施設か子どもが何歳かによっても保育料が変わります。
このように、就学前の費用は直接確認することが大切になってきます。少し前と制度が変わっている可能性があるので注意しましょう。
妊娠から未就学児にもらえる手当や制度など
子育て支援制度はいろいろありますので、妊娠から未就学児について代表的なものを紹介させていただきます。
子育て支援制度の例
・出産育児一時金
・出産手当金
・児童手当
・保育園、幼稚園の補助(自治体によって違う)
・児童扶養手当(ひとり親家庭)
・特別児童扶養手当(障がいのある子がいる家庭)
この中で、「児童手当」は0歳から中学卒業までもらえるお金です。全てを貯金すると約200万円になります。0~3歳までは一律月1万5,000円、3歳~小学生までは第1・2子が月1万円、第3子以降は1万5,000円、中学生は一律月1万円が支給されます。所得が所得制限限度額以上の家庭では、子どもひとりにつき一律月5,000円になります。年3回に分けてまとまった金額が振り込まれるので、いつの間にか使ってしまうことのないよう、別口座で管理するなどして有効活用しましょう。
今回は妊娠・出産から小学校に入学する前までの子どもに係る費用についてお話しました。次回は小学校から大学卒業までにかかるお金についてお伝えします。
筆者プロフィール: 加藤葉子(マイライフエフピー代表)
子育て真っ最中のファイナンシャルプランナー。子どもを授かったことをきっかけに、教育費や学資保険の仕組みなどに興味を持ち、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、3年で子どもの教育資金を貯める。現在は、全国の女性からの教育費・老後資金・起業・離婚・投資なのお金の相談を中心に執筆・マネー講師として活動しながら、ファイナンシャルプランナーの育成にも力を入れている。自身のホームページ「女性とシングルマザーのお金の専門家」でもお金にまつわるお役立ち情報を提供している。