東海道新幹線で、ちょっとどこかに出かけてみよう。仕事などで急ぐ旅でもない。そんなときにふさわしい旅行商品がある。「ぷらっとこだま」だ。

「ぷらっとこだま」は、JR東海ツアーズが発売している、旅行商品である。「きっぷ」ではない。わかりやすくいえば、新幹線に片道だけ乗る、ツアーのようなものである。

各駅停車の「こだま」しか乗ることのできないかわりに、旅行費用が安い。たとえば東京から新大阪までが、「のぞみ」なら1万4,450円、「ひかり」なら1万4,140円、エクスプレス予約のEX-ICサービスなら1万3,370円のところ、1万300円である(繁忙期は別料金)。また料金をプラスすることにより、グリーン車も使用できる。

東京・品川駅発の東海道新幹線 料金の比較(通常期/単位は円)

さらに、駅の売店での1ドリンク引換券もついてくる。この券で630ml以下のソフトドリンク(栄養ドリンクを除く)、350ml以下の缶ビール(300円以下)、酎ハイのいずれか1本と引き換えられる。また一部店舗を除き、「1ドリンク引換券+150円」でワイン(赤または白・187ml)1本と引き換えることもできる。

「ぷらっとこだま」の購入方法

「ぷらっとこだま」は、「きっぷ」ではなく「旅行商品」のため、駅の指定席券売機や「きっぷうりば」(JR東海では「みどりの窓口」とは呼ばない)では買うことができず、インターネットや電話での予約や、JR東海ツアーズの各支店、新幹線沿線を中心としたJTBの各支店で販売されている。

インターネット予約なら宅配、電話予約ならJR東海ツアーズ、旅行代理店ならば代理店での受け取りで旅行商品を使用することができる。普通のパッケージツアーで旅行代理店に予約して、旅行のクーポンを手配してもらうようなものだ。

「ぷらっとこだま」で注意すべきことは、当日にきまぐれに乗ろうとしても乗れない、ということである。予約方法によっても異なるが、6日前~前日に購入しなくてはならない。座席は指定されているものの、「こだま」しか利用できず、しかも利用できる区間は限られている。予約後の変更もできない。その上、JR東海の新幹線専用改札口しか使用できない。JR東日本から乗りかえる場合、いったん改札を出て、東海道新幹線の改札口に向かう必要があるのだ。そのため、乗る際にはぎりぎりにならないようにしたい。

「ぷらっとこだま」をどう利用していくか

「ぷらっとこだま」が利用できる駅は、東京・品川、新横浜、静岡、浜松、名古屋、京都、新大阪の各駅である。これ以外の駅では、利用できない。

また、「こだま」は東京から名古屋までは30分に1本、新大阪までは1時間に1本のため、ある程度スケジュールを意識して乗車する必要がある。しかも名古屋までは3時間程度、新大阪までは4時間4分かかる。「のぞみ」よりもおおよそ1時間から2時間余計にかかるということだ。

格安ゆえに、さまざまな制限があることは理解しておいてほしい。また、「こだま」には車内販売がない。そのため、車内で飲み物や食べ物を入手することができない。

一方、「こだま」は各駅停車であり、停車駅の多くで「のぞみ」や「ひかり」の通過待ちをするため、5分程度停車する。そこで飲み物や食べ物を購入することが可能だ。「鯛めし」で有名な静岡駅、うなぎの駅弁が充実している浜松駅、稲荷寿司で知られる豊橋駅など、「のぞみ」が停まらないような駅の名物駅弁を購入することも可能だ。もちろん、購入の際には迷いすぎて乗車していた列車に乗り遅れないようにしたい。

「ぷらっとこだま」は、東京から新大阪までの急ぎの移動にはあまり適さない。しかし、東京から名古屋までの時間に余裕がある個人旅行や、静岡・浜松あたりへの旅行・帰省などには、ちょうどいい旅行商品だ。

単純におトクさを追求するだけなら、割にあわないものかもしれない。座って忍耐している、というのならばつらいだろう。そういう人は普通に「のぞみ」に乗ればいい。しかし、途中駅での停車時間の長さを利用して駅弁を楽しんだり、区間を上手に考えて利用したりするなら、「ぷらっとこだま」は最良のパートナーだ。

鉄道を楽しめる人がゆったりと東海道新幹線に乗るのにふさわしいのが、「ぷらっとこだま」である。

著者プロフィール: 小林拓矢
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。

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