清水氏は、50年以上前に作られたフィルムを超高画質の4Kデジタルとしてよみがえらせるにあたり「普通、映画というものはオリジナルネガからプリントを焼いて上映するのですが、今回はオリジナルネガからダイレクトにスキャニングを行い、今までのプリントでは見えなかった細かい部分がはっきりわかるようになっています」と解説。

また、短縮版ネガとカット部分のネガをつなぎ合わせる作業について清水氏は「短縮版として残っているネガと、発見されたカット部分のネガとは、保存の環境が違っていたので、劣化の状態もまた違うんです。それを元通りに復元しようとすると、同一場面(人物のアップなど)で繋いだとき色味が合わない。それを調整するのが難しかった」と、苦労を語った。さらに「短縮版の際、フィルムを切ってつなぐ接着面を作る必要があるため、何コマかが犠牲になってしまうんです。コマが落ちている状態で普通につないでもスムーズにつながらない。そこで、何コマ抜けているのかを細かく調べながら、デジタル技術で前後のコマを参考に『失われたコマ』を作って、違和感なく動きがつながるよう作業しました」と、今回の作業がいかに緻密なものであったかを明かした。

4Kデジタル化によって画面が鮮明になったため、撮影当時の苦労を思い出したという中野監督は、キングコングと対決した大ダコのシーンを挙げ「あの大ダコは円谷(英二)さん入魂の特撮でね。本物のタコを生け簀ごと購入して、岬に建てた一畳ほどのミニチュアセットに置いて動かしたんですが、これが動かなくてね(笑)、ライトを当てたり、棒で突いたりしてなんとか苦労して撮ったんですが、今回の4K版では、そのタコのツヤや質感がすごく出ていましたね。もしも円谷さんがこれを見たらびっくりしてくれるんじゃないかな」と、画質向上をあらためて絶賛。

これを受けて清水氏は「デジタルだとどうにでも加工ができるので、キレイにしようと思えばいくらでもできてしまう。ゴジラの尻尾を吊っているピアノ線が映っていても消すことができますが、当時の映画の味わいがなくなってしまうのも困るので、そこはあえて残しています」と説明した。

『キングコング対ゴジラ』は、当時としても珍しい多重音声(4チャンネルステレオ)で収録された作品だが、今回の修復作業では音声も根本から入念なチェックを行い、最高の水準で視聴できるよう技術の粋が凝らされている。清水氏からは「ステレオ4chのシネテープが奇跡的に残っていて、ステレオ音声の再現ができました。最初にテープを再生した時、明らかにステレオ音声が左右逆に聞こえるトラックがあるんです。そこで昔のスタッフに詳しく尋ねたら、おそらくケーブルを刺し間違えた部分があったのではないか、という判断になり、混ざっている音をいったんバラバラにして並べ直し、当時のスタッフが望んでいた正確なバランスの音声として再現しました」との説明があった。

最後に記者から「今後、4Kデジタルリマスターしてほしい東宝特撮映画は何か」と尋ねられた中野監督は、自身の演出作『連合艦隊』(1981年)を挙げ「ミニチュアワークにどうやったらリアリティを持たせられるか、僕なりに考えて作ったフィルム時代の映画。それが4Kになったらどうなるか? 観ていられないものになるか、それともさらなる勢いが出るのか、そういった部分をぜひ確かめてみたい」と期待をこめて熱く語った。

「スカパー! 4K 総合」での視聴はスカパー!4K公式サイトにて。日本映画専門チャンネルでは2Kダウンコンバートでの放送で、視聴方法の詳細は視聴ナビに掲載されている。なお、7月29日19時45分からはこれらのチャンネルで同じくサイマル(同時)再放送が実施される。

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