もうすぐ夏休みだ。夏にどこに、どんな列車に乗って行こうかと考えている人も多いだろう。先日「青春18きっぷ」について取り上げたが、このきっぷ以外にも、長期休暇の時期に使えるきっぷはある。
東日本と北海道に特化した「北海道&東日本パス」
その代表的な存在として、JR北海道・東日本に加え、青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道・北越急行、また東日本大震災の被災地の大船渡線BRT(バス高速輸送システム)の快速・普通列車に乗車できる「北海道&東日本パス」があげられる。「青春18きっぷ」では通過利用しかできない、あるいは利用そのものができない第三セクターでも、このきっぷがあれば利用できる。新幹線・特急列車は利用できない。
また、このきっぷは東北と北海道の間を移動する際にも便利だ。新青森~新函館北斗間のみを乗車する場合に限り、特定特急券を購入すれば、普通車の立ち席に乗車することができる。席さえあいていれば、座ることも可能だ。特急しか走っていない石勝線の新夕張~新得間は、このきっぷだけで普通車自由席に乗車可能である。
「青春18きっぷ」は7月20日から9月10日までの期間しか使えない。しかし「北海道&東日本パス」は7月1日から9月30日まで利用できる。有効期間は、「青春18きっぷ」よりも長い7日間。しかも値段は「青春18きっぷ」にくらべて安く、1万850円となっている。しかもこども料金もあり、こちらは5,420円だ。ただし、連続する7日間が有効期間となっており、「青春18きっぷ」のように小分けして利用することはできない。
東日本エリアを中心に快速・普通列車で旅行する、あるいは試しに北海道新幹線に乗ってみたい、という人にとっては、7日間の休みさえ確保できれば、「青春18きっぷ」よりも便利なきっぷである。東日本各線を乗りつぶしたり、あるいは北海道まで足を伸ばしたりという人には便利である。ただし、北海道では普通列車が少ない路線もあるので、注意していただきたい。また、第三セクター各社で乗り降りでき、通過だけではなく寄り道ができるというのはこのきっぷのメリットである。
JR北海道・東日本のおもな駅・旅行センター、周辺のおもな旅行会社で発売されている。「みどりの窓口」がある駅で発売されていると考えるといいだろう。
JR九州全線乗り降り自由な「ぐるっと九州きっぷ」
JR九州各線の快速・普通列車が連続3日間乗り放題になるのは「ぐるっと九州きっぷ」。1万4,000円と「青春18きっぷ」より高いものの、特急券などを別に購入すれば、新幹線や特急列車も乗車可能だ。
九州の場合、大分県と宮崎県の県境のように、普通列車の本数の少ない地域があり、そういった地域を旅行するには、特急列車にも乗車できるこのきっぷは便利だ。九州には特急・普通問わず、水戸岡鋭治氏による魅力的なデザインの車両が多く走っており、そんな列車を堪能することが、このきっぷでは可能になる。
ただし、博多~小倉間の山陽新幹線と、博多からの博多南線は利用できない。これらの路線は、JR西日本の管轄だからである。
なお、発売期間は2017年の3月31日までとなっており、夏休みを問わず利用できる。夏休み以外にも、3連休があるような行楽シーズンに乗車するのに便利なきっぷである。このきっぷは九州エリアのおもな駅・旅行センターや駅周辺の旅行会社で販売されている。
特急にも乗れる「四国フリーきっぷ」
JR四国の鉄道線全線と土佐くろしお鉄道の窪川~若井間、高速バスを除くジェイアール四国バスの路線バスに乗車できるのが「四国フリーきっぷ」だ。快速・普通列車だけではなく、特急列車の普通車自由席が乗り降り自由である。有効期間は連続3日間で、1万6,140円。こどもは半額である。
四国は、特急列車が多く運転されており、それらを利用すれば効率的に移動することができる。高知~松山間以外は鉄道網が整備されており、とくに高松を起点に考えると、各方面への移動がしやすいようにできている。
このきっぷはJR四国のおもな駅・旅行センターやその周辺の旅行会社で販売されている。なお、JR北海道のおもな駅・旅行センターでも販売されている。
実際の買い方としては、飛行機もしくは夜行高速バス、「サンライズ瀬戸」で四国に入り、駅の「みどりの窓口」で購入してそこからスタート、というのがいいだろう。発売期間はなく、常時発売されているのがこのきっぷの特徴である。
「青春18きっぷ」だけではなく、時刻表の黄色いページや赤いページをよく読んで、それぞれの旅にふさわしいきっぷを見つけて使い、夏休みの鉄道旅行をエンジョイしていただきたい。
※価格はすべて税込
著者プロフィール: 小林拓矢
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。