俳優の渡辺謙が、今秋テレビ朝日系で放送される山田太一脚本のドラマスペシャル『五年目のひとり』で主演を務めることが23日、分かった。

『五年目のひとり』撮影現場で握手を交わす渡辺謙(左)と山田太一氏=テレビ朝日提供

渡辺が演じるのは、東京の小さなベーカリーで働く木崎秀次。たまたま訪れた中学校の文化祭でダンスを披露していた少女に目を奪われ、その少女に「君のダンスがいちばんキレイだった」と声をかけたことから交流が始まるが、少女はやがて、木崎が東日本大震災で受けた心の傷に触れていくことになる。

この震災で、実際に支援活動に携わってきた渡辺は、当時避難所を回った際に、家族も全て失った男性に出会ったことを思い出し、「僕は彼をハグして一緒に泣くことしかできなかったのですが、おそらく(自分が演じる)主人公の秀次も、そうした深い心の傷を受けたのだと思います」と想像。

これまで『星ひとつの夜』(07年・フジテレビ)、『遠まわりの雨』(11年・日本テレビ)、『おやじの背中―よろしくな。息子』(14年・TBS)と、さまざまな山田脚本作品に出演してきたが、「セリフを役者が発したときに、目が覚めるような新たな発見が生まれ、胸に突き刺さるんです。まさに"山田マジック"ですね!」と、その世界観を今回も楽しみにしているようだ。

その山田氏はこのほど、撮影中のスタジオを訪問し、渡辺を激励。気がかりだったシーンもあったそうだが、「謙さんがある意見を提案して乗り越えてくださいました。さすがだと敬服しました」といい、「謙さんならば、(震災の)被害に遭われた方々に穏やかに、深く心を寄せて演じてくださると信じています」と全幅の信頼を寄せている。

テレビ朝日では、2014年2月にも、東日本大震災を背景に、2つの家族の崩壊と再生を描いた山田太一脚本ドラマ『時は立ちどまらない』を放送。今作では、それとは異なる視点で、震災の"その後"の人々の心の機微を描いていく。