外為どっとコム総合研究所では、外為どっとコムとの共催で6月23日に実施される英国の欧州連合(EU)離脱・残留を問う国民投票の影響についての個人投資家向け緊急アンケートを実施した。

「問1: 6月23日に実施される、英国の欧州連合(EU)離脱・残留を問う国民投票ですが、どちらの結果になると思われますか」に対する回答割合は「離脱」が26.8%、「残留」が55.3%、「わからない」が17.9%という結果であった。「残留」予想が過半数を占めており、「離脱」予想の2倍に達した。

「6月23日に実施される、英国の欧州連合(EU)離脱・残留を問う国民投票ですが、どちらの結果になると思われますか」

英国の世論調査では「残留」と「離脱」が拮抗している模様だが、日本の個人投資家の間では楽観的な見方が支配的となっているようだ。2014年9月にスコットランドで行われた英連邦からの独立を問う住民投票が、騒動の末に「残留」に落ち着いた事も影響しているのではないだろうか。

「問2: 仮に投票結果が『EU離脱』となった場合、ポンド(通貨)へどのような影響があるとお考えでしょうか」への回答割合は「大幅にポンド安となる」が63.7%と最も多く、「小幅にポンド安となる」が13.4%、「影響なし/わからない」が9.4%と続いた。

「仮に投票結果が『EU離脱』となった場合、ポンド(通貨)へどのような影響があるとお考えでしょうか」

英国がEUを離脱すれば、ポンドが大きく下落すると考える投資家が大多数である事がわかった。ただ、「大幅にポンド高となる」が7.1%、「小幅にポンド高となる」が6.4%と、英国のEU離脱でポンドの上昇を見込む投資家も少数ながら存在した。

「問3: 仮に投票結果が『EU残留』となった場合、ポンド(通貨)へどのような影響があるとお考えでしょうか」に対する回答割合は「大幅にポンド高となる」が34.9%と最も多く、「小幅にポンド高となる」が32.5%と僅差で続いた。

「仮に投票結果が『EU残留』となった場合、ポンド(通貨)へどのような影響があるとお考えでしょうか」

「影響なし/わからない(16.5%)」を挟み、以下「小幅にポンド安となる(11.3%)」、「大幅にポンド安となる(4.8%)」と続いた。「離脱」の場合ほど回答割合に差が付かず、中でも「大幅にポンド高」の割合が比較的低かったのが特徴的だ。予想通りの「残留」ではサプライズにつながりにくいため、ポンド相場の反応もやや控えめなものになるという個人投資家の読みが働いたと推測される。

まとめ: 「残留」に賭ける動き

今回の緊急調査では、個人投資家の予想が英国のEU残留に傾いている事がわかった(問1)。また、もし予想に反して「離脱」となった場合には「大幅なポンド安」の進行を見込む(問2)一方、予想通りに「残留」となっても「大幅なポンド高」が進むかどうかは確信が持てない様子(問3)が示された。欧米金融機関の試算でも、「残留」の場合のポンドの上昇幅は「離脱」の場合の下落幅よりも小さくなるとの指摘が多く、個人投資家の見立てに違和感はない。

その上で、外為どっとコムにおけるポンド/円のポジション指数を確認すると、6月21日NYクローズ時点の比率は、買い(ポンド買い・円売り)が64.1%に対して売り(ポンド売り・円買い)が35.9%となっており、FX投資家が「残留」に賭けてポンドを買い越している事がわかる。ただ、英世論調査の結果は離脱支持と残留支持が拮抗しており、個人投資家の思惑通りに「残留」が決まるかどうかについては、予断を許さない状況となっている。そうした中で「残留」に賭けるのはリスク&リターンの観点から見て効率的とは言い難く、得策ではないように思われてならない。

調査は6月15日~22日、外為どっとコムの「外貨ネクストネオ」口座開設者を対象にメールでアンケート回答URLを送付して行った。有効回答数は794件。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya