日産自動車は14日、バイオエタノールから発電した電気で走行する新しい燃料電池システム「e-Bio Fuel-Cell」の技術を発表した。「e-Bio Fuel-Cell」は、エタノールや天然ガスなどの多様な燃料と酸素との反応を利用して高効率に発電する固体酸化物形燃料電池(SOFC)を発電装置としたシステムで、今回が自動車の動力源として世界で初めて車両に搭載する試みとなる。

「e-Bio Fuel-Cell」の発電・駆動の仕組み図

「e-Bio Fuel-Cell」は、車両のタンクに補給されたバイオエタノール(100%エタノールまたはエタノール混合水)から、SOFCによって発電した電力を車載バッテリーへ供給し、モーターで駆動するしくみ。SOFCは高い発電効率を有し、ガソリン車並みの航続距離(600km以上)の実現が可能となるほか、電動駆動ならではの静粛性、リニアな発進、加速など、電気自動車(EV)と同等のドライビングプレジャーを享受できる。

SOFCは、酸素と反応する燃料であれば発電が可能なため、燃料の多様性が特徴。とくにバイオエタノールは、北南米やアジアなど世界の多くの国で実用化されており、こうした国々においては、地域のエネルギーと既存インフラの活用が可能となる。また、走行時に排出されるCO2が、バイオエタノールの原料となるさとうきびの成長過程で吸収するCO2と相殺されることにより、大気中のCO2の増加をゼロに近づけることができる「カーボン・ニュートラル・サイクル」が実現する。

「e-Bio Fuel Cell」は、扱いやすくインフラへの大きな投資を必要としないエタノール混合水を燃料に使用することにより、市場を拡大する可能性を有する。EV並みの安価なランニングコストを実現し、商用との相性も良く、電動駆動車ならではの静粛性とガソリン車並みの短いエネルギー充填時間により、24時間フル稼働させることが可能。長時間安定的に発電できるため、冷凍便など幅広い配送に対応した電源供給が可能となり、大きなベネフィットを創出するとしている。