昔と比べて給料が上がりにくくなっている現在、大学進学にかかる支出は家計にとって大きな負担になりつつあります。そのような中、2016年6月政府は一億総活躍国民会議のプラン内で、返済不要の給付型奨学金について「創設に向け検討を進める」と明記しました。導入時期は未定ではあるものの、国が主体の奨学金がはじまったら、家計の負担は減り、資金面で大学進学ができない……なんてことも少なくなりそうですね。

そんな頼りになる奨学金ですが、現在の奨学金制度では「貸与型奨学金」と「給付型奨学金」の2種類あることをご存知ですか? 返却義務のある「貸与型」に対し、「給付型」は返済する必要がありません。「貸与型」と「給付型」ともに、奨学金をもらうにはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。

給付型奨学金を受けるには、どんな条件が必要なの?

「貸与型」は、在学中に毎月一定額を低金利あるいは無利子で借りることができますが、卒業後7カ月目以降から返済していく必要があります(日本学生支援機構の場合)。一方の「給付型」は「貸与型」同様、在学中毎月一定額が給付されますが、返済義務はありません。低金利で奨学金を借りる「貸与型」に比べて、返済義務のない「給付型」が有利なのは一目瞭然ですね。

給付型奨学金の受給資格は?

給付型奨学金をもらうための条件は、大学によって異なりますが、条件によく挙がるものを中心にみていきましょう。

まず、経済的理由による教育格差を防ぐため、「家計状況」は最もよくある条件の一つです。例えば、慶應義塾大学では、世帯収入1,000万円未満あるいは事業所得514万円未満の家庭であれば、年額60万円の奨学金の対象になります(その他条件あり)。

母子家庭など「家計が苦しくて大学に行かせてあげることができない……」という家庭の場合は、まず給付型奨学金制度の条件を確認するといいでしょう。「学業・競技成績」も多くの大学が条件に設けています。これは、在学中の成績・入試・センター試験などで一定の成績を収めた人、スポーツ競技で優秀な成績を収めた人などが対象になります。さらに、スピーチコンテストや論文コンテストの入賞など、文化活動の実績が対象になることも。

このほか、TOEICや英検、簿記、パソコン検定などの「資格保有」をはじめ、地方出身者であること、兄弟姉妹が同じ大学に在籍、親が卒業しているなどの条件で受講料が優遇されることもあります。地震などの災害を受けた学生に対しては「災害救援支援金」などの制度があり、状況によっては学費が全額免除されるケースもあります。

給付型奨学金は、うまく利用すれば高額な教育費の負担を大幅に軽減することができます。大学に限らず企業や団体が独自に奨学金制度を設けていたり、公立大学で奨学金制度が導入されるようになったり、だんだん支援の幅は広がってきています。

もちろん大学進学までに教育資金をコツコツ準備しておくことが一番ですが、そのときによって生活環境が変わってしまうのは当たり前のこと。大学進学を控えている家族がいる場合、少しでも家計の負担が楽になるように、まずは志望する大学の奨学金制度を調べてみるのも良いのかもしれません。

筆者プロフィール:武田明日香(たけだ あすか)
エフピーウーマン所属、ファイナンシャルプランナー。日本テレビ「ZIP!」やTBSテレビ「あなたの損を取り戻せ 差がつく! トラベル!」「Saita」「andGIRL」等の雑誌、「webR25」「わたしのマネー術」等のウェブサイトなど幅広いメディアを通じ、お金とキャリアの両面から女性が豊かな人を送るための知識を伝えている。人生の"やりたい"が"できる"に変わるお金の教養スクール開講中!