小倉百人一首を用いた"競技かるた"にかける青春を描いた人気少女漫画を原作に、現在前後編で上映されている映画『ちはやふる-上の句-』『ちはやふる-下の句-』。ロングランヒットを続けるだけではなく、観た人がこぞって熱量高く感想を語っていることも話題となっている。少女漫画原作といえば、ターゲットは中高生の少女たちというのがセオリーだが、今作は大人の心も大きく動かす青春物語として、今、熱く愛されているのだ。

映画『ちはやふる』

その熱を支えるものは一体何だったのか。今回は、企画・プロデュースを担当した日本テレビ・事業局映画事業部、北島直明氏に取材。話の中から「演技ワークショップ」「若い役者のキャスティング」「原作との関係」という3つのキーワードをピックアップし、すでに製作が発表されている続編の構想についても聞いた。

日本テレビ・事業局映画事業部の北島直明氏

演技ワークショップ

クレジットに現れる「演技ワークショップ 平田オリザ」の文字。劇団青年団主宰で駒場アゴラ劇場支配人、東京藝術大学アートイノベーションセンター特任教授など、さまざまな大学で学生に接する現代口語演劇論の提唱者であり、2015年に公開されたももいろクローバーZ主演の映画『幕が上がる』の原作者でもある。役者陣、監督、プロデューサー陣、演出・カメラマンに至るまで、『ちはやふる』製作陣は平田氏の約3時間のワークショップを2回受けていた。

ーーどういった経緯で、ワークショップを受けることになったんでしょうか?

北島:制作を担当したROBOTの巣立プロデューサーが関わっています。エネルギーがあって、荒削りな感じも含めての作品を目指したので、若い監督・スタッフで作らないと、という気持ちがありまして、プロデューサーをお願いすることになったんですが、巣立さんが映画『幕が上がる』に関わっていたので、「平田さんのワークショップをやってみませんか?」と。

役者は、20名くらい参加したと思います。スケジュールの都合上参加できなかった者もいましたが、ワークショップでは、これまで自分たちが感覚でやっていたことが、全部ロジカルに言語化されて、みんな、必死にメモを取りました(笑)。もちろん役者がメインではありましたが、台本をどう読めばいいのかというところも教えてくれたので、プロデュース側も台本作りの根本を、再認識させられたんです。

例えばでいうと、シチュエーション作りについて。原作ものを取り扱っていると、2時間という限られた上映時間の中で、どうしても制作側の都合で言わせたくなるセリフもあります。そういう時に、きちんと必然性のあるシチュエーションを作れているのか。ちょうど台本を詰めているところだったので、スタッフ陣があらためて見直す機会にもなりました。