――2006年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞し、芸能界デビューしてから、今年10年という節目ですね。

いえいえ、毎年が節目ですよ!

――なるほど! 一年一年というわけですね。

そうですね。そうやって積み重ねているのですが、最近は仕事一つ一つがとても楽しく、あまり考え過ぎずにできているというか、いい精神状態で仕事ができています。今年は時代劇にも挑戦するなど、新しいことも楽しんでいます。

――何かいい精神状態になるきっかけがあったんですか?

年齢…?(笑)

――それだけですか?(笑)

いや、どうなんでしょう(笑)。昨年から今年にかけて、自分の中で何かあったんですかね。おそらく、舞台で蜷川幸雄さんにしごかれながら女性役を演じたり、寺山修二さんの作品に挑戦したり、経験したことのない世界に飛び込んで、今まで思っていたものが全部覆されたことが大きかったのだと思います。最初はそれがつらかったんですが、できていくうちに楽しくなっていき、自分の可能性を狭めるのではなく、いろんな人に染められるのも大事なのかなと思うようになりました。そして、自分の"核"ができたからかもしれません。

――その"核"とは?

こうありたい、こうしたいという理想ばかりを追っていると、結局自分にウソをついていることになるので、もっと自分に素直になろう、素直に新しいものを吸収しようと思えたことだと思います。こうなりたいと言っている時点で、自己否定になってしまうと思うんですよね。漠然と人間的におもしろくありたいという思いはありますが、理想に縛られるのはよくないなと。自分の理想なんて狭いということがわかったので。そういった自分の"核"ができたことが、今のいい状態につながっているのだと思います。

――考え方としては大きな変化ですね。

そうですね。自分の知らない世界でもまれた経験と、そして、鋼太郎さんの一言も影響を与えてくれたと思います。「普通じゃありえないですよね」というようなことを僕が言った時に、「『普通はこうだ』みたいなことを言ったらダメだ! 普通じゃないからお客さんはお金を払って見に来てくれる。普通じゃないということはこの仕事ではいいことなんだ」とおっしゃって、型にはまった考え方をしていてはいけないということを教わりました。

■プロフィール
溝端淳平
1989年6月14日、和歌山県出身。2006年、「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞し、芸能界デビュー。2007年にドラマ『生徒諸君!』で俳優デビューを果たし、2008年には映画『ダイブ!!』でスクリーンデビュー。映画『赤い糸』(08)では、第33回日本アカデミー賞優秀新人賞を受賞した。現在、数々のドラマや映画、舞台に出演するほか、トーク番組『誰だって波瀾爆笑』の司会としても活躍中。5月13日より放送のNHK-BS時代劇『立花登青春手控え』に出演。