映画『仮面ライダー1号』版の仮面ライダー1号

3月26日より上映される、仮面ライダー誕生45周年を記念した映画『仮面ライダー1号』のメインキャラクター・仮面ライダー1号のビジュアルが28日に公開された。

仮面ライダー1号に変身するのは、もちろん1971年に放送を開始した第1作『仮面ライダー』と同じく本郷猛。かつて世界征服をたくらむ悪の秘密結社ショッカー、ゲルショッカーと戦った本郷は、あれから45年を経た現在も世界各地をわたり、人間の自由を守るために巨大な悪と戦い続けていたという。

これまでにも『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(2009年)や『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(2011年)、『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦』(2014年)、『スーパーヒーロー大戦GP仮面ライダー3号』(2015年)といった劇場映画で仮面ライダー1号はたびたびその勇姿を見せていたが、今回の映画では『仮面ライダー』の原点に立ち返り、デザインそのものを一新。長きにわたる戦いの中で自らの体を強化していった結果、全身に強固な装甲をまとった武骨なスタイルの新しい「1号」が誕生した。

『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』で声の出演を果たし、『仮面ライダー大戦』で昭和ライダー15人のリーダー格として久々に本郷猛を演じた藤岡弘、氏は、今回堂々の「主演」を務めるにあたって並々ならぬ意欲を燃やしているという。70年代に「変身ブーム」と呼ばれる社会現象を起こし、日本全国の子どもを熱狂させた、あの『仮面ライダー』の世界がいまここによみがえる。ではここで、かつての『仮面ライダー』がいかにして企画され、製作に至ったかを簡単に説明していこう。

スマートではない異形のヒーロー

連続テレビドラマ『仮面ライダー』の企画は、大阪のテレビ局・毎日放送が東映に「新しいヒーロー作品を作りたい」と発注したことから始まった。そこで東映は『サイボーグ009』などのヒット作を生み出したSFコミックの第一人者・石ノ森章太郎氏を原作者として迎え、かつてないヒーロー作品の創造に着手した。

まず初めに決まったのは「バイクに乗った仮面ヒーロー」というコンセプトだった。バイクヒーローといえば、国産ヒーローの偉大なる先人として『月光仮面』の存在があったものの、『仮面ライダー』は単なる過去作品の焼き直しに終わるものではなかった。

斬新だったのは、その「バッタ」を模したヒーローキャラクターである。70年代初頭は経済発展の中で環境破壊が進み、「公害」が深刻な社会問題となっていた。ヒーローのイメージをバッタに求めたのには、ヒーローを失われつつある大自然の象徴にしたいという石ノ森氏の思いがあったという。

バッタをモチーフとした仮面ライダーのマスクは、企画会議の席で「ヒーローらしくないのではないか」と物議をかもした。しかしあえてこの「異形のヒーロー」を推し、制作に踏み切ったスタッフ諸氏の決断があったおかげで、『仮面ライダー』が空前の大ヒットを飛ばしたと断言してもいいだろう。本郷猛は、愛車サイクロン号で疾走すると同時に、ベルト(タイフーン)に風圧を受け、風力エネルギーを得て仮面ライダーへと変身する。まさに大自然の使者というべきヒーローであった。

怪奇アクションドラマの追求

『仮面ライダー』のコンセプトは「怪奇アクションドラマ」というもの。すなわち、動植物の能力を備えた「ショッカー怪人」が巻き起こす怪奇・恐怖の描写に力が入れられた。夜の街の片隅にある影に、怪人が潜んでいて襲ってくるかもしれない……といった現実的な恐怖が、子どもたちの「怖いもの見たさ」の興味をあおり、さらには超人的なパワーで怪人を粉砕する仮面ライダーの強さ、カッコよさを際立てることになる。

怪人の中でも蝙蝠男(人間蝙蝠)、さそり男、サラセニアン(サラセニア人間)、コブラ男などは人間の生身の「眼」をそのまま生かしたマスクが使用されており、改造人間としての邪悪な意志を感じさせるたたずまいが、いっそうの恐怖を生み出した。

アクション面では、大ヒットドラマ『柔道一直線』(1969年)で破天荒な柔道アクション全般を担当した殺陣集団・大野剣友会が芝居心たっぷりの立ち回りを披露し、JAC(ジャパン・アクション・クラブ/現JAE)が仮面ライダーの超人的なジャンプ力をトランポリンで表現。バッタの驚異的な跳躍力が備わっているというライダーの設定に十分な映像的説得力をもたらしている。

『仮面ライダー』の時代

1971年は、『タイガーマスク』や『巨人の星』など「スポ根」ジャンルのアニメヒーローに加え、『帰ってきたウルトラマン』『スペクトルマン』などの特撮ドラマが再び脚光を浴び始めた時期。そんな中で生まれた『仮面ライダー』は、オートバイのスピード感、異形のヒーロー像、ショッカー怪人に代表される怪奇ムード、そしてダイナミックなアクション演出といった各要素が子どもたちに受け、徐々に人気を高めていった。

アクシデントによって藤岡氏が降板を余儀なくされるものの、新たに仮面ライダー2号=一文字隼人(演:佐々木剛)が登場。主役一時交代を経てなお番組人気はさらなる高まりを見せ、人気絶頂となった1972年4月には藤岡氏が待望の主役復帰を果たしている。番組人気もさることながら、関連キャラクター商品(変身ベルト、自転車、カード付スナックなど)が爆発的な売り上げを記録し、「変身ブーム」と呼ばれる社会現象を巻き起こした。

全98話、2年間もの長期放送をなしえた『仮面ライダー』だが、その勢いはとどまることがなく、番組が3年目を迎えるにあたってさらなるレベルアップを目指し、新シリーズ『仮面ライダーV3』(1973年)が製作される。この時点より、『仮面ライダー』が現在にも連なる人気テレビシリーズとして発展していったのだ。

(C)「仮面ライダー1号」製作委員会
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