「めがね」と聞いて思い浮かぶのはどんなめがねでしょう。形は? 色は? 素材は? ジョン・レノンがかけていたような金属製の丸めがねや、ジョニー・デップがかけているような縁の太い黒のウェリントンを思い浮かべる人も多いでしょう。では、それ以外にどんなめがねが思い浮かびますか?

世の中、たくさんのデザインがあふれていますが、いざあらためて考えてみると、案外知らないもの。めがねって「身近だけど、知らない」、そんな位置付けの人も多いかもしれません。

知らないから選ぶのも難しいですが、知らないよりは知っているほうがいいですよね。今回は「素材」をテーマに、めがねの印象がグッと上がる「世界中のめがね」を紹介したいと思います。

WOOD(木): 「HERRLICHT」(ドイツ)

「HERRLICHT」(ドイツ)のフレーム

世界的には、ここ10年ほどで木製フレームのブランドが一気に増えました。その火付け役とも言えるのが、ドイツブランド「HERRLICHT(ヘアリヒト)」。紙のように薄い木の板を積み重ねつくられているそのめがねは、ネジまで100%天然木を使用。1枚の板から切り出されたものではなく、層を重ねているので時間がたっても変形することもなく、顔に合わせたフィッティングもできるのがこのフレームのすごさなのです。

あえてコーティング剤を使用せず、無垢(むく)な木で作られているため、使っていくうちに自分の汗や皮脂でゆっくりといい色に経年変化を起こしてくれます。私も愛用しているんですが、とにかく軽い。そして天然素材独特の肌触り。すべてにおいて、使えば使うほど愛着が増してきます。

BUFFALO HORN(水牛の角): 「RIGARDS」(香港)

「RIGARDS」(香港)のフレーム

水牛の角は、ヨーロッパではとってもポピュラーな素材。現在使用されている「プラスティックフレーム」(正式にはアセテートという素材)より実はもっと昔、13世紀から使用されていたのが、このバッファローホーン。天然素材なので一本一本違う独特な風合いが魅力です。

主流はきれいに磨き上げられた上品なタイプですが、私が紹介したいのはファッションデザイナーがスタートした「RIGARDS」。このブランドの特徴はデザインはもちろん、さまざまな加工技術にあります。いろいろな加工を施し質感を変えたそのめがねたちは、バッファローホーンに新しい印象を与えてくれています。天然素材の持つ個々の配色の違いがより魅力となり、「自分のもの」という感覚にさせてくれます。

LEARTHER(革): 「JEAN FRANCIOS REY」(フランス)

「JEAN FRANCIOS REY」(フランス)のフレーム

昔から使用されていた素材ですが、ここ2年ぐらいでまたよく見かけるようになってきたレザー。テンプル(耳にかける部分)に使用されているものを見かけた人もいるかもしれません。近年見かけるようになってきたのはオールレザーです。その形状はさまざま。

今回紹介したいのは、一般的に使用されているアセテートフレームの表面にレザーが貼ってある「JEAN FRANCIOS REY(ジャン・フランソワ・レイ)」です。このブランドはめがね業界ではとっても有名な「J.F.REY」の新コレクション。レザー感を全面に出すのではなく、あくまでさりげなく、近づいたときに「ハッ」とする雰囲気の醸し出し方がまた魅力です。

STONE(石): 「LUCAS DE STEAL」(フランス)

「LUCAS DE STEAL」(フランス)のフレーム

衝撃的だったのが、石を使用しためがね。このブランドのデザイナー・ルーカスは、今世界で一番と言っていいほど注目されているデザイナーです。レザーやウッドなどを使用したコレクションもありますが、今回紹介したいのは大理石を使用したコレクションです。

彼のフランスのアトリエまで行き、製作工程を説明されましたが、いまだに「石がめがねフレームに? 」と思ってしまいます。薄い石の板が使用されているので、全く重くありません。抑えめの色なので、いわゆる個性的というわけでもないですし、独特な品の良さを醸し出してくれます。「絶対、買うぞ! 」と私が狙っている一本です。

TEXTURE(生地): 「HAPTER」(イタリア)

「HAPTER」(イタリア)のフレーム

生地を使用したブランド「HAPTER(ハプター)」は、ステンレスに生地を貼り合わせてあるので強くて軽いという特徴を持ちます。イタリア最古の生地メーカーの軍用素材を使用しており、独特な世界観がかっこいいです。

あえてネジを使用せず、一体構造にすることによる見た目も美しいですね。軍用の素材を使用してあるだけに、使っていくうちにまだらに汚れてくると、もっと渋さが増してくる変化も楽しみなフレームと言えます。

いかがでしたか? めがね通の人も知らない素材やフランドばかりだったのではないでしょうか。世界には、まだまだ魅力的なブランドがたくさんあります。まずは今回紹介したブランドのホームページをチェックして、めがねの魅力を堪能してください。

筆者プロフィール: 藤 裕美(とう ひろみ)

1977年福岡県生まれ。眼鏡スタイリスト。10年間、眼鏡屋で働きながら彫金技術を学び、ネジからすべてメガネを製作、個展もひらく。2001年、24歳のときに店長として、SHOPプロデュース、買い付け、さまざまなイベントを企画。2007年、ドイツへ渡り、眼鏡ブランド『FROST』に勤務。作り手側からも眼鏡の知識を深める。帰国後、2009年から眼鏡スタイリストとして活動を開始。いとうせいこう氏との出会いにより、自身のHPで「眼鏡予報」スタート。2011年10月「めがねを買いに」(WAVE出版)出版。 国内外で著名人のスタイリングや、メディア露出、誌面でのスタイリング、講演会、デザインアドバイス、コンサルタントなど、メガネにまつわることをなんでもしている。また、ファッションだけではなく、目の健康や医療器具としてのメガネ選びの大切さを社会福祉施設や幼稚園などに訪問し伝える活動をしている。眼鏡というキーワードを軸に常に新しいメガネの発信を続けている。