笑った際に口角がきちんと上がるのは表情筋がしっかりと動いている証拠だ

年齢を重ねていくとともに気になりだす顔のたるみ。「年齢だから仕方ないか」と思っている人も少なくないかもしれないが、実は日常の何気ない動作がたるみを進行させている可能性があるのだ。

今回は、M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長の今村美穂医師に、顔のたるみについて伺った。

パソコンの長時間使用はNG

顔のたるみの主な原因としては、「顔を作っている筋肉の委縮や弛緩」「加齢による老化」「乾燥」などが挙げられる。特に加齢による老化は顔のたるみを形成する主原因とされ、いかにして肌の老化スピードを遅らせるかが、対策を行ううえで重要となる。

だが、それ以外にもたるみを促進させてしまう因子が複数あると今村医師は解説する。その一つが首の位置のずれを引き起こす「パソコンの長時間使用」。首の位置がずれると無意識に体がバランスをとろうとし、首の筋肉に余計な緊張を生み、この緊張が顔のたるみを招くからだ。

たるみ以外の疾病にもつながる口呼吸

別の因子に「口呼吸」があるが、こちらの方がさまざまな病気につながるリスクを秘めており厄介だ。

「口呼吸の人は舌が突き出るような形で下がり、犬のようにいつも口が開いたままになっているので顔がだらーんと長くなる『ロングフェイスシンドローム』になりやすいです。このような人は、顔が長く下にたるんできます」。

特に、出っ歯やかみ合わせの不具合などで口が閉じられず、常に開きっぱなしの人は「口唇(こうしん)閉鎖不全」と呼ばれ、今村医師のクリニックに矯正希望で訪れるケースも多いという。

口唇閉鎖不全の患者は低酸素状態になるため、目の下にクマができやすい。その他の見分けポイントとして、「口を閉じたときにあごの下に梅干しのようにしわができるのは、無理して閉じている証拠なので口唇閉鎖不全が疑わしいですね」。

口が頻繁に開く口呼吸は歯を乾燥させる。乾燥は歯垢(しこう)を招き、歯垢は歯周病や虫歯へとつながるリスクを生じさせる。また、口が開いたまま寝ると舌が気道をふさいでいびきにつながる。肌のたるみだけの危険にとどまらないため、口呼吸を自覚している人は注意しよう。

改善のために表情筋を動かそう

やっかいなたるみ改善させるためには、表情をつくるための「表情筋」のトレーニングが有効だ。その方法は、女性ならば化粧やフェイスマッサージ時に、男性ならば歯磨きや洗顔時に意識して口元を動かすだけでOK。より効果を得たいのであれば、下記のようなエクササイズを実践してみるのもお勧めだ。


(1)口の中で右ほおに向かって舌を突き出す
(2)左のほおに向かって舌を突き出す
(3)ほおをきつめにすぼめる
(4)ほおに空気を入れて膨らませる

表情筋がしっかり動かせれば、喜怒哀楽をきちんと表現できる。逆に言えば、表情筋を動かせなければ表情の変化が乏しく、ビジネスや恋愛などで不利益を被る可能性も否定できない。そのため、日ごろからの意識が大切だと今村医師は話す。

「口を『い』とか『う』を強調して発音するときの形にして、どれぐらい筋肉が動くかで表情筋の具合を確認してもらいたいですね。きちんと口角が上がる方は大丈夫ですが、下がっていると不機嫌そうに見えるので、外回りの営業の方や接客業をされている方は特に練習したほうがいいでしょうね」。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 今村美穂(いまむら みほ)

M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長、MIHO歯科予防研究所 代表。日本歯科大学卒業、日本大学矯正科研修、DMACC大学(米アイオワ州)にて予防歯科プログラム作成のため渡米、研究を行う。1996年にDMACC大学卒業。日本矯正歯科学会認定医、日本成人矯正歯科学会認定医・専門医。研究内容は歯科予防・口腔機能と形態及び顎関節を含む口腔顔面の機能障害。MOSセミナー(歯科矯正セミナー、MFT口腔筋機能療法セミナー)主宰。