みんなキャラを探している

――使い分けるといえば、女装をして大学に行くこともあるそうですが、周囲の反応はどうですか?

女の子はすごい「かわいいー」とか言ってくれるんですけど、大学の先生とかは触れてくれません(笑)。それに男の子もあんまり反応しないんです。自分は反応が楽しみということで女装をしている部分もあるのに、無反応なのはちょっと残念だし、不思議です。

――同業の男性はどんな反応ですか?

大学の男の子とは全然違って、女装でバラエティに出てからは、「キャラでしょ?」とか「台本でしょ?」って言ってくる人が多くて面白かったですね。芸能界だと、僕みたいに変わった人はいっぱいいるから、自然な反応なんですよね。みんなキャラがないことは埋もれてしまうことでもあると知っているのでそれが悩みの人も多いし、記号とかキャラを持ってる人はやっぱり強いんだなと思います。

――阿久津さんは、本当に多いですよね

そうですね。アイドルも好きだし。オタクなことをつぶやくと、Twitterのフォロワーさんがぐんと増えます。単に「おはよー」とかつぶやかないで、140文字全部を使いきりますね。そうやって好きなことをつぶやいてると、仕事につながったり、たとえば千葉雄大くんが好きって言ってたら、一緒に仕事をする機会ができたり(笑)。やっぱり、好きなことは言ってみるもんだなと思います。

男の子は「ぶりっ子」が苦手

――番組内でアイドルのプロデュースもやっていましたが、他人をプロデュースする目線で見て気づいたことってありますか?

女の子のアイドルは下から目線でかわいくすることができるんですが、男の子の場合は、上に立ってかっこよくあることのほうが得意なんですよね。だから、メンバーにはかわいく「演じる気持ちで」とアドバイスしました。「演じる」って言葉をかけることで、彼らの役者魂に火が付くんです。それで、かわいいアイドルというものを本気で演じてみようって気になるし。

ただ、そのアイドルグループ(『妖 ~AYAKASHI~』)では、二次元の世界並みに、メンバーのキャラクターを細分化してるんで、かっこいいキャラも必要なんですよね。でも僕は、かわいいキャラについてはよく知ってるんですけど、かっこいいキャラには疎かったので、アニメイトの店員さんに聞いて、なぜ俺様なキャラが人気なのかを探ったりしながらやっていました。

――そんなに男の人ってかわいく見せることにためらいがあるんですか?

たまに、男だけのお客さんのイベントがあるんですけど、そういうときって、だいたいが「男祭り」の雰囲気になっちゃうんですよ。体育会系になっていく。そういうときはMCも「盛り上がってんのか!」って感じでオラオラ系になる。なぜか、男の子って男の前でぶりっ子というかかわいくできないんですよね。女の子に対してもかわいくいけない。でも、僕は男の子も上から強くいくだけじゃなくって、かわいさもどんどん出していけばいいと思うんですよね。

――そのほかで、阿久津さんが努力していることってありますか?

僕は、自分に興味を持ってくれる人と話すのはいくらでも話せるんですけど、自分に興味のない人に振り向いてもらうことが苦手で、それができる人が「うらやましくない」って言いながらうらやましいんです(笑)。それはもう人間性なのかもしれないけど、どうにかしたいですね。あと、僕の仕事って、意外と事前準備の多い仕事だと思うんですよ。少女漫画とかサブカルについても、そのときに準備をすればいいんじゃなくて、普段からアンテナを張っておかないといけない。そこって目に見えない部分だけど、目に見えない努力って重要だなと思っています。


西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トークラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。