塩崎恭久厚生労働大臣は7日、経済財政諮問会議において、いわゆる「130万円の壁」について、就業調整を防ぎ、被用者保険の適用拡大を円滑に進める観点から、短時間労働者の賃金の引上げや、本人の希望を踏まえて働く時間を延ばすことを通じ、人材確保を図る意欲的な事業主に対し、取組への一時的な支援を行う案を示した。

いわゆる「130万円の壁」は、年収が被扶養認定基準(130万円)を超えると、年金・医療の保険料負担が発生するが、この負担を回避するため、労働者や企業において、就業調整する傾向が見られる問題を指す。

塩崎厚労相の提出資料では、この問題について、労働力需給が逼迫するなかで、こうした就業調整を克服し、「短時間労働者の労働参加の促進」「短時間労働者の所得・年金(将来の所得)の確保」を同時に達成することが必要とした。

その上で、就業調整を防ぎ、被用者保険の適用拡大を円滑に進める観点から、短時間労働者の賃金の引上げや、本人の希望を踏まえて働く時間を延ばすことを通じ、人材確保を図る意欲的な事業主に対し、取組への一時的な支援を行う案を提示。

具体的には、キャリアアップ助成金を活用し、対策を実施(平成28年10月~平成31年度)(※一部平成28年4月からの措置)する。

被用者保険の適用に際して、短時間労働者の賃金引上げや、本人の希望を踏まえて労働時間延長を行った事業主に対して、賃金引上げ幅や労働時間延長幅に応じて、段階的に助成。このことで、短時間労働者の収入が確実に上昇し、将来の年金の増額につながるとした。

賃金引上げと労働時間延長の双方を行った事業主には、1事業所あたり最大600万円を助成。例えば、毎日1時間(週5時間)労働時間延長を行った場合や、賃金3%引上げ+週4時間労働時間延長を行った場合には、短時間労働者の手取りは被用者保険加入後も増加するとしている。

対象人数は、20万人程度(のべ)(※対象人数については、対策期間の総計)。

短時間労働者の就業促進のための対策(案)(出典 : 内閣府ホームページ)

対策の内容の詳細は以下の通り((1)と(2)は併用可能)(※いずれの措置も1事業所当たり最大300万円まで)。

(1)賃金の引上げ(最低賃金引上げ分を含まず)を行う事業主への支援

  • 賃金テーブルを改定し、短時間労働者の賃金を2%以上増額させた事業主(平成28年4月からの措置) : (助成額)1事業所当たり人数と対象範囲に応じて5万円~300万円(大企業3/4程度)

  • 積極的に適用拡大を行う中小企業(※中小企業が適用拡大できるよう、法改正することが前提)において、被用者保険適用となる短時間労働者等について、賃金を増額した事業主(平成28年10月から平成31年度までの措置) : (助成額)賃上げ3%以上:1人当たり2万円(大企業1.5万円)~賃上げ14%以上:1人当たり10万円(大企業7.5万円)

労働時間延長を行う事業主への支援

  • 週労働時間を5時間以上延長し被用者保険適用した事業主(平成28年4月から平成31年度までの措置) : (助成額)1人当たり20万円(大企業15万円)

  • 上記賃金の引上げとあわせ処遇改善に積極的に取り組んだ事業主(平成28年10月から平成31年度までの措置) : (助成額)1時間以上延長:1人当たり4万円(大企業3万円)~4時間以上延長:1人当たり16万円(大企業12万円)