フィギュアスケート・高橋大輔さんの美ボディーの秘密は、体幹トレーニングにあった

11月27~29日のNHK杯をもってグランプリ(GP)シリーズが終わり、GPファイナル進出者も決まりました。同じく22、23日には全日本ジュニア選手権が開催されました。ジュニアからの推薦選手も含め、2016年の世界選手権や四大陸選手権などの代表選手が決まる全日本選手権への出場者もそろうなど、フィギュアスケートシーズンも中盤戦になってきました。

シーズン中は国内大会の予選などもあるため、2週続けて試合がある選手もたくさんいます。試合で疲れた身体を回復させることが最優先となるため、陸上・氷上共にハードなトレーニングができない場合もあります。

そのような場合には、身体を動かしながらほぐして整える「コンディショニング」と呼ばれることを行う選手もいます。今回はそのコンディショニングの中から、体幹のトレーニングに関してご紹介したいと思います。

選手たちはおなか周りを満遍なく鍛える

体幹という言葉は今ではよく聞く言葉になりましたが、文字通り「身体の幹にある筋肉」で、腕や足を除いた胴体部分を指します。おなか周りの骨は背骨しかなく、内蔵は筋肉で守られています。ジャンプやスピンを行う際は遠心力がかかるため、この筋肉が強くなります。安定すれば、回転軸が安定することはもちろん、腕や足をスムーズに動かせるようになります。

体幹トレーニングと聞くと、「体操座り(三角座り)の状態から寝て起きてを繰り返す腹筋を鍛える動作」を思い浮かべる方も多いと思います。ですが、フィギュアスケーターの多くは、それだけではなく、おなか周りを満遍なく鍛えます。

例えば、体操座りの状態から起き上がる動作をひねりながら行い、わき腹部分に効かせたり、足は体操座りのまま寝た姿勢で足を持ち上げ、おろす動作をして下腹部に効かせたりなどです。また、腹筋ばかり鍛えても筋力のバランスが悪いため、背面も一緒に鍛えるのが一般的です。

高橋さんのトレーナーが提唱する「連動性」

筋肉は鍛えるだけでは効果的に使うことができないため、動作を体幹と連動させながら、体幹を鍛えるという方法もあります。ボールの中に砂などの重りが入った「メディシンボール」を持ち、体幹からひねって力をボールに伝えて投げるといったトレーニングも、そのトレーニングの中のひとつです。

体幹がしっかりしていないと、ひねりから戻す動作でブレが生じ、ボールの飛距離が変わってきます。身体をひねって戻すという動作はフィギュアスケートの回転に入る動作に似たところもあり、私も現役時代にはこのトレーニングをよく行っていました。

動作を連動させる点の重要性に関しては、高橋大輔さんのパーソナルトレーナーである渡部文緒さんもよく話されています。

渡部さんが上梓された本で、「とにかく痩せたい人の自重トレ」などの実技が紹介されている『シンプルエクササイズ』(新星出版社/1,620円・税込)の中でも、「動作の連動」はよく出てくるキーワードになっています。

筋力トレーニングは、鍛えている部分を意識することで効果が高くなるといわれています。寝転がって、足の振り上げの反動を使って起き上がるといった動作を例にあげてみましょう。

「足の振り上げの勢いを腹筋に伝える」→「その勢いを上半身まで伝えて起き上がる」というように、力が今どこにかかっているのか細かい部分を意識し、力の伝え方を身体で覚えていくことで、よりしなやかな動きができていくのです。

日常の動作も意識するように

身体を連動させるということを意識すると、歩く動作はもちろん、日常のささいな動きまで気になってくると思います。さらに、体幹を意識して鍛えて筋肉量を増やすと基礎代謝量も増え、いわゆる「やせやすい体」になるメリットもあります。

筋肉を鍛えることは大事なのですが、日常の動作をしなやかに行えるよう、ぜひ一度体幹との連動を意識してみてくださいね。

筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。