「東京都足立区の子どもの貧困実態は - 児童扶養手当受給のひとり親が増加」と題した前編では、同区の子どもを取り巻く状況や、対策の方針についてお伝えした。後編となる今回は、具体的な対策の内容について引き続き区の担当者に聞いた。
貧困を抱える子ども・家庭を孤立させない
同区は「教育・学び」「健康・生活」「推進体制の構築」の3つを柱として81の事業で貧困対策を進めていくとしている。同事業に共通しているのは、貧困の子どもや家庭を「孤立させない」という姿勢だ。
例えば「教育・学び」の新規対策として実施予定の「居場所を兼ねた学習支援」は、NPOなどへの委託により経済的に苦しい家庭の中学生が高校進学を目指す学習場所を提供するというもの。これに加えて同区では、学業とは別にほかの人とおしゃべりできるようなスペースも用意するとしている。子どもたちの「居場所」をつくることで、コミュニケーション能力や社会性、生活習慣を身につけてほしいという趣旨だ。
さらに「健康・生活」の対策としては、妊娠届け出時に誕生する子どもの家庭環境をいち早く把握するためのアンケート調査を実施予定。健康保険の加入状況や経済的な不安の有無などを聞き取っていく。これにより、子どもの貧困につながる恐れのある要支援者を早期に発見し、早期の支援につなげていくことができるからだ。
また「推進体制の構築」として今年度から既に実施しているのが「つなぐシート」の活用だ。「つなぐシート」とは、行政に相談に訪れた人の状況を他部署でも共有するための記入フォームのこと。例えば、税金の相談のため行政を訪れた人が、子どものことで心配事を抱えていた場合に、その状況をシートに記入して支援ができる部署に引き継ぐという形で活用できる。
担当者は「周囲に支援してくれる人がいたり、地域とのつながりが生まれたりすれば、子どもや家庭にとって貧困状況を抜け出すモチベーションになる」と語った。
ひとり親を重点的に支援
これらの施策に加えて、同区が力を入れているのが「ひとり親」対策だ。資格取得を目指す際、国による補助金にプラスして給付金を出したり、ひとり親に向けた求人情報をメール配信したりするなどの取り組みを通じてひとり親の就職を支援。ひとり親同士が就業、生活、子育ての悩みを共有して仲間作りができるようなサロンの開催も検討している。
一方で担当者は、「ひとり親の状況や、就業支援を行った結果、雇用された人がどれだけいるかなどの現状は把握できていない。今後調査をして施策を打つための参考にしたい」と語った。
親の就業に大きく影響する保育園の入園選考を例にとってみれば、就業の有無を問わずひとり親の調整指数(入園しやすさを家庭状況によって調整するためのポイント)を高く設定している板橋区や武蔵野市などと比べると、同区の指数は低くなっていて、サービスが利用しやすい状況とは言いがたい。
足立区は子どもの貧困全般に関する調査を区立小学校のすべての1年生を対象に実施。2016年春には調査結果をまとめて公表するとしている。当事者が求めている支援はどんなものか。実態を把握したうえでのさらなる対策を期待したい。
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