11月23日まで開催された「第19回名古屋モーターショー」。最も注目を集めたモデルといえば、トヨタの新世代ライトウェイトスポーツコンセプト「S-FR」だろう。開幕前日に行われた事前取材でも、カメラを向けるメディアが引きもきらず、開幕初日にはまるで人気アイドルのように観客が押し寄せていた。

名古屋モーターショーで人気を集めたトヨタ「S-FR」

「S-FR」はFRレイアウトを採用するコンパクトなスポーツカー。全長4mを下回る小さなボディに、シンプルで親しみやすいデザインを採用しており、走りを楽しみたいマニアだけでなく、スポーツカーに興味のない女性にもアピールしそうだ。

「S-FR」商品化するには高いハードルがあるのだが…

このモデルがここまで注目されるのは、期待する人が多いにもかかわらず、現時点で発売されるかはっきりしないから、というのもあるだろう。同モデルの外観はアイデアスケッチのようなコンセプトカーとは一線を画すもので、市販車と見間違うほど完成している。そのため、発売は時間の問題と感じた人も多かったようだ。

「S-FR」のインテリア

ただし、インテリアを見るとその印象は逆転する。明らかに試作の、それもかなり初期の段階にしか見えないからだ。

実際、「S-FR」を発売するには決して低くないハードルがある。現代の自動車はプラットフォームと呼ばれる基本構造を多くの車種で共用するのが一般的だが、いまとなっては希少なFRレイアウトを採用する「S-FR」では、この手法を使えない。かといって専用のプラットフォームを新たに開発するとなると、莫大な費用がかかり、販売価格が高価となってしまう。

しかし、このハードルの高さが逆に、「S-FR」を取り巻く議論を白熱させている面がある。たとえば、「S-FR」はマツダとの共同開発になるとの予測があるのだ。トヨタが発売して成功を収めたFRスポーツカー「86」はスバルとの共同開発。ならば、「S-FR」はマツダとコラボして……という予測は、奇抜というよりはむしろ順当な考えかもしれない。なにしろトヨタとマツダは今年、業務提携を発表したばかりだ。

トヨタあるいはマツダから新たな発表がない以上、すべては憶測にすぎない。ただ、トヨタが若い人々やクルマに興味を持たない人を取り込むことに注力していることも間違いない事実。「S-FR」の商品化がかなわなかったとしても、同様のコンセプトのニューモデルがいずれ登場するはずだ。