仕事とプライベートの両立は、働く者が抱える一生の課題。
その2つだけでも大変なのに「オタ活」まで本気で取り組んでいる、いろいろなもののオタクの方々へインタビューを行っていきます。誰にだって、1日は24時間で1年は365日。彼ら彼女らの「働き方」からヒントをもらいましょう。
●取材対象者:
Eさん/27歳/男性/ウェブサービス運営会社勤務
早稲田大学卒業後、クラウドファンディング運営会社へ就職。2014年から現在のウェブサービス運営会社に勤務。社会人5年目。高校時代からアイドルにハマり、現在に至る。
アイドルは「キャリアパス」のひとつ
聞き手 塚岡:今日はお忙しいところありがとうございます。
Eさん:いえいえ、大丈夫です。よろしくお願いします。
塚岡:Eさんは幅広くアイドルがお好きだと伺いましたが……。
Eさん:そうですね。AKBから始まって、ももクロ(ももいろクローバーZ)、ハロプロ、チキパ(Cheeky Parade)、エビ中(私立恵比寿中学)……いろいろ好きです。
塚岡:事務所箱推し(特定の芸能事務所所属のアイドルグループをまとめて好きになること)というわけでもなく、活動の方向性も違うグループ名が並んだ印象ですが、何か共通点がありますか?
Eさん:そうですね……卒業があるってことですかね……。
塚岡:卒業があるから、好き?
Eさん:僕には「金沢ショック」というのがありまして。
塚岡:なんですか「金沢ショック」って(笑)
Eさん:大学時代にAKB研究生の金沢有希ちゃん(芸名は当時のもの。現在はエイベックス所属のアイドルグループ「GEM」でリーダーを務める金澤有希のこと)が好きだったんですが、CDをいっぱい買って握手会に行った直後に卒業を発表したんです。握手して、応援してます! って伝えた直後にです。まだ研究生だったんで、これからを楽しみにしていたところで、ですよ? こんなことあんの!? っていうショックとトラウマがあって。それで、誰か1人に入れ込むよりは、幅広くアイドルを好きになる方向にシフトしました。
塚岡:それはキツい体験でしたね……。代わりがいるって言うと言葉が悪いですけど、幅広く応援することで喪失感を和らげるという方向にシフトしたわけですね。
Eさん:そうですね、最初は確かにそうでした。でも、結果として卒業のあるアイドルグループそのものに面白みを見出すようになりました。
女優になりたい、モデルになりたい、ソロで歌いたい、学業に専念したい。いろんな理由で卒業していきます。アイドルっていうのは一生できるものでもないですし、昔のアイドルと違って流動性も高いですよね、今は。彼女たちにとってアイドルはキャリアパスの1つなんですよ。そこを全力で応援することに喜びを感じます。
1人の子を全力で応援するのもいいですが、「箱」としてのアイドルグループを応援していく楽しみを知った気がします。
アイドルが好きすぎて、アイドルになってしまった
塚岡:高校時代からアイドル好きで、大学時代はAKBにハマったということですけど、なにかきっかけがありましたか?
Eさん:モー娘。をテレビで見るっていうのが、テン年代に入って少し落ち着いたころにAKBにハマって、「金沢ショック」があったのをきっかけに幅広いアイドルを見るようになったことですね。弟もアイドル好きなので、当時まだ代々木公園で路上ライブをしていた頃のももクロを教えてもらって、見に行ったりもしました。
もう一つ、ちょっと恥ずかしいんですが…… 僕、アイドルをしていた時期がありまして…。
塚岡:えっ? ……えっ? アイドルを「していた」?
Eさん:はい、アイドルとして活動していたんです。早稲田のインカレサークル内で「YMT56(ヤマモトイソロク)」というグループを作っていました。
塚岡:マジっすか……。
Eさん:マジです。AKBが好きで好きで仕方ないのにチケットはとれないし、もう自分たちでやろうって。コスプレして本気で踊って歌う男だけのグループでした。当時、運良く注目してもらって雑誌に取材されたりテレビに出たりもしましたね。AKBの新作リリース日には大学の近所にあったCD屋さんで売り子をやっていたのも高田馬場周辺ではかなり話題になって。楽しかったですね。
塚岡:すごいな……いやすごい。アイドル好きが学園祭で踊ったりする話は珍しくないですが、そこまで広く認められた話は聞きませんね。
Eさん:かもしれません。その活動を通じて「アイドルに声援は届く」ということを実感してからは、本当に楽しくなりましたね。