ホルモンを活用すれば、「太りにくく、やせやすい体」になることも可能だ

いつの時代も、世の女性はスリムな体形にあこがれを抱くものだ。とはいえ、現実の世界にはおいしいものが満ちあふれており、ついつい食べ過ぎてしまい理想とはかけ離れてしまうことも。そんなときは、ホルモンをうまく活用して「太りにくく、やせやすい体」を作ることを推奨したい。

今回はホルモン補充療法などを行うAACクリニック銀座の院長・浜中聡子医師に、ダイエットに活用したいホルモンについて伺った。

早食いが太る理由

「早食いをすると太る」という言葉を昔からよく耳にしているかもしれないが、その理由を正しく説明できる人はあまり多くないだろう。その答えは、「食欲抑制ホルモン」とも呼ばれている「レプチン」というホルモンにある。

私たちの脂肪細胞からレプチンが分泌されると、大脳の視床下部を介して「もうおなかがいっぱいだ」という指令を出して、食欲を抑制するモードへと体を切り替える。と同時に、筋肉や肝臓へ働きかけて、摂取したエネルギーを消費させようとする。つまり、レプチンが働くことで余分なカロリー摂取を控えられ、かつ摂取したカロリーを消費しやすくなるのだ。

「血中にレプチンがあった方がやせやすいと言われていますが、レプチンは食事から20~30分後に分泌されるため、早食いはダメなのです。『ゆっくり噛んで食べる』『時間をかけて食べる』というのが、レプチンの分泌をうながすにはいいですね」。

体脂肪が多いとレプチンの受容体の働きが鈍くなり、食欲を抑えにくくなる。極端に食事を抜いて一時的にやせても、レプチン受容体の働きが正常に戻らなければ食事を我慢できずにドカ食いをしてしまい、結果としてリバウンドしてしまう。レプチンを意識し、ダイエット時は運動もしっかり行うようにしよう。

インスリン感受性を高める

食事をすると血液中のブドウ糖が多くなり、血糖値が上がる。その血糖値を下げるホルモンとして広く知られているのが「インスリン」だ。

ところが、高脂肪食や血糖値を急激に上げるような食事を続けて内臓脂肪が増えてくると、インスリンの働きが鈍くなり、結果として「インスリン感受性」が低くなってしまう。そして、肥満や糖尿病などにつながってしまうというわけだ。

「インスリン感受性を高めて太りにくい体を作るには、急に血糖値が上がる物を食べないことがポイントです。うどんよりもそば、パンよりも胚芽パンというように、なるべく白い食べ物ではなく茶色などの色がついた食べ物にするなど、食べ物の質にこだわるようにしましょう」。

さまざまな効能を持つアディポネクチン

レプチン同様に小型の脂肪細胞から分泌され、血中を流れて全身を巡る善玉ホルモン「アディポネクチン」もやせ体質を作るうえで重要。肝臓で働いて、脂肪から私たちのエネルギー源となるブドウ糖の合成を促すため、体脂肪を減らすにはうってつけの存在だ。

「アディポネクチンはがん細胞増殖の抑制や、インスリンの負担軽減、抗動脈硬化、血管拡張作用などの効果もあり、まさにいいこと尽くしのホルモンと言えます」。

アディポネクチンを働かせるカギは、「適度な内臓脂肪」だ。内臓脂肪量が適切だと、脂肪細胞がアディポネクチンを分泌する。だが、脂肪量が多すぎると脂肪細胞が肥大化し、悪玉ホルモンを出してアディポネクチンやレプチンを駆逐してしまうため、逆に太りやすくなってしまう。

そこで、浜中医師はアディポネクチンを増やすための具体策として、「運動、海藻、青魚」を挙げる。ウオーキングなどの有酸素運動をしつつ、食物繊維とミネラルが豊富な海藻や、オメガ3-脂肪酸を多く含むさば・いわしなどの青魚を摂取するのがよいと話す。また、大豆などの植物性たんぱく質もお勧めだ。

食欲の秋にホルモンダイエットの活用を

今回はレプチン、インスリン、アディポネクチンという3つのホルモンを紹介した。もちろん、このほかにも「太りにくく、やせやすい体」を作るためのホルモンは数多くある。ただ、どれだけ各ホルモンの特性を知っていたとしても、それらを踏まえてダイエットを実践するには、当人の確固たる意志が必要となることを忘れてはいけない。

食欲の秋のせいで、おなか周りや太ももあたりが気になりだしてきた人は、ホルモンを活用して賢くダイエットに励んでみてはいかがだろうか。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 浜中聡子(はまなか さとこ)

医学博士。北里大学医学部卒業。AACクリニック銀座院長。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医などの資格を多数取得。アンチエイジングと精神神経学の専門家で、常に丁寧な診察で患者に接する。