おなか周りの肉が気になり体重計に乗ってみたら、絶句してしまったことはないだろうか

「美」への意識が高い女性にとって、毎日の「自分チェック」は欠かせないものだろう。姿見や手鏡はもちろん、時には無意識のうちに電車のドアやショーウィンドウでも自分のメイク具合の状態や肌のコンディション、プロポーションなどを見ている女性も少なくないだろう。

ところが、いつも通りチェックしているなかで、ふと「あれ、私最近太った? 」「やだ、小じわ増えた……? 」と感じた経験はないだろうか。食事や運動などのライフスタイルを何も変えてないのに、そのような肌や体形の変化を感じた場合には、女性ホルモンが関与している可能性がある。

本稿では「ホルモン補充療法」などを行うAACクリニック銀座の院長・浜中聡子医師の解説を基に、女性ホルモンと体形の関係について紹介していこう。

2種類の女性ホルモンの役割

女性ホルモンは主に卵巣から分泌されるが、30代後半になると卵巣がだんだん衰え始める。それに伴い、女性ホルモンの分泌量も少なくなってくる。女性ホルモンが減少すると自律神経に乱れが生じるため、精神面に影響が出るが肉体面でも如実に変化が現れるのだ。

実際にどのような変化が出てくるかを理解するには、女性ホルモンの役割をきちんと知る必要がある。

女性ホルモンは「エストロゲン」(卵胞ホルモン)と「プロゲステロン」(黄体ホルモン)に大別できるが、それぞれのホルモンが体におよぼす影響は異なっている。それぞれのホルモンが欠乏すると、体形の変化以外に以下のような症状が引き起こされる。

プロゲステロン欠乏によって起こる症状

乳房痛 / 腹部膨満感 / むくみなど

エストロゲン欠乏によって起こる症状

肉体疲労の回復悪化 / 骨粗しょう症 / 顔の血色悪化 / 瞳の乾燥 / 髪の乾燥 / 頭頂部の薄毛 / はりのない頬など

体形に訪れる変化

では、この2つの女性ホルモンが減ることによって、体形にはどのような変化が訪れるのだろうか。

「まず、エストロゲンが減るとバストが垂れて見た目が悪くなりますね。さらに顔が乾燥してきて、唇や目の下の細かい小じわが増えます。そしてプロゲステロンが減ると、セルライトが増えます。おなかやおへその下から太ももにかけた部分、いわゆる『お肉がいらない場所』への脂肪が定着しやすくなります。体形も、上半身から下半身にかけて膨らんでいく『洋ナシ型』になってきますね」。

この見た目の変化は、女性ホルモンの分泌量が低下し始め、かつ基礎代謝量も落ち込んでくる30代後半ごろに起きることが多いという。

「『ダイエットをするとまずは胸から脂肪が落ちていって、おなかなどの減ってほしい部分の脂肪がなかなか減らない』という話をよく聞くかと思いますが、30代後半ごろの年齢の方は、まさにこういうシチュエーションに悩む時期でもあります。30代、40代になってくると、今までと同じ生活をしているのに、肌の状態やプロポーションの維持すらままならないということです」。

女性ホルモンにとってよい生活習慣とは

胸が垂れ始め、小じわが増えだし、そして余分な肉やセルライトが目立つようになる――。まさに女性にとってダブルパンチ、トリプルパンチとも言えるような"惨劇"が女性ホルモンの低下によって訪れる。そして、残念ながら女性ホルモンは自然に増やすことはできないのだ。

内服用の錠剤や皮膚に貼るパッチ剤などを用いたホルモン補充療法ならば、女性ホルモンを増やすことは可能だ。だが、女性ホルモンの減少を招く生活習慣をしているようでは、せっかくホルモンを補充してもその効果は薄まってしまう。

浜中医師は、「普通の健康を維持することが女性ホルモンにもよい」と話す。

■質のよい睡眠をとる

■栄養バランスが取れた食事を摂取する

■適度な運動をする習慣をもつ

■ストレスをためない

これらの生活習慣を保っていれば、女性ホルモンの減少に歯止めをかけることができる。いざというときにホルモン補充療法という名の"魔法"をかけることはできるが、その効果がどれだけ続くかは当人次第。「女性としての美」を長く保つには、最終的に健康的なライフスタイルが大切だと覚えておこう。

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記事監修: 浜中聡子(はまなか さとこ)

医学博士。北里大学医学部卒業。AACクリニック銀座院長。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医などの資格を多数取得。アンチエイジングと精神神経学の専門家で、常に丁寧な診察で患者に接する。