米国の3人組ブルース・ロックバンド、ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(以下ジョンスペ)が、俳優・生田斗真主演の映画『グラスホッパー』(11月7日公開)の挿入歌として、新曲「don't wanna live like the dead」を書き下ろしたことが24日、明らかになった。

映画『グラスホッパー』の挿入歌「don't wanna live like the dead」を書き下ろしたザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン

本作は、作家・伊坂幸太郎氏による120万部を突破した同名小説を原作に、生田と『脳男』(2013年)以来のタッグとなる瀧本智行監督がメガホンを取った作品。殺された婚約者への復讐のため、裏社会に身を置く元中学教師・鈴木を生田が演じ、対象者を自ら死に追い込む"自殺屋"鯨役を浅野忠信、孤独な若き殺し屋・蝉を山田涼介が演じる。このほか、麻生久美子、波瑠、菜々緒らが出演し、鈍く交わっていくサスペンスを3人の男たちが彩る。

原作および劇中で、蝉の相棒・岩西(村上淳)が敬愛してやまない架空のロック・アーティストのジャック・クリスピン。ジョンスペは、そのジャックの歌う曲として新曲を書き下ろした。これは原作の伊坂氏がかねてよりバンドの大ファンであったことから実現。歌詞には同作のキーワードがちりばめられ、ミディアムテンポなバラードに仕上がった。

ジョンスペ側は、「架空のアーティストとして楽曲を提供するという企画オファーを受けたのは初めての経験だったよ」と振り返り、「面白い試みだと思ったし、自分にとってとてもチャレンジングな仕事だと思った」と意欲的に取り組んだ様子。「台本と、ジャック・クリスピンの曲が流れるシーンで登場する岩西と蝉の関係性についての資料、2人が登場している2~3分の映像を見て、それらを参考に作詞作曲をしていった」と制作秘話を明かす。

また、ジャックについて「参考にしたのは、自分自身にとってのクラシック・ロック・アーティスト。例えば、ローリング・ストーンズのような」と解釈しつつも、それ以上に「蝉と岩西の関係性」を重視。「上司と部下のような関係性なのか、先輩と後輩なのか、それとも友だちなのか、実は全く違うのか…」とイメージを膨らませ、「そういう2人の葛藤を映像から感じ取ったから、それをそのまま形にした」と説明した。

さらに本作を鑑賞した上で、「蝉と鯨の関係、ライフスタイルはとてもファンタジックだった」と述べ、「逆に鈴木は誰もが共感できるキャラクター」と分析。「蝉は少し若いキャラクターだけどロックンロールで、ロックな部分は少し分かる気がする」と共感を示した。一方で、「一番想像つかなかった」存在だったのが鯨。そこからくみ取ったキャラクター像を「ブルース・ウィリス的な"超"人間的なものを感じた」と表現している。

原作の伊坂氏は、「映画サイドから『ジャック・クリスピンのイメージは?』と聞かれた時、ジョンスペが好きなので名前を挙げた」と今回の企画の裏側を語る。しかし、「まさかジョン・スペンサーさん本人が引き受けてくれるとは」と驚きを隠せなかったようで、「あまりのうれしさに、それを知った時、大声出しちゃいました」と感激の瞬間を振り返った。

瀧本監督には、「当初は気難しい人でないかとドキドキしていました」という懸念もあった。ところが、ジョンスペの好意的な姿勢に「作品の内容や設定をよく理解し、度重なる細かいリクエストにも丁寧に応じてくださいました」と感謝。楽曲については「こちらのイメージ通りのクールな古典的ロックで、細かいこだわりが随所に感じられ、尺も映像にピタリとあっていました。実に職人的で完璧な仕事ぶり」と絶賛している。

ジョンスペは、1990年までノイズ・ロックバンドのプッシー・ガロアとして活動していたフロントマンのジョン・スペンサーを中心に1991年、ニューヨークにて結成。プッシー・ガロアの時期からあったパンク・ロックやオルタナティヴ・ロックからの影響とブルースを組み合わせ、大都会的なブルース・ロックを創り上げた。1994年にリリースしたサード・アルバム『オレンジ』で現地や日本の音楽誌などにも絶賛され、高い評価を獲得した。なお、映画に際して海外のバンドが架空のアーティストを担当するという例は、過去に『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005年)内でパルプのジャーヴィス・コッカーやレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドらによるウィアード・シスターズなどがある。

(C)2015「グラスホッパー」製作委員会