累計発行部数5,000万部を超える"怪物"漫画『進撃の巨人』が実写化され、今夏の邦画界を盛り上げた。これだけの人気漫画の実写化には、賛否両論はつきもの。俳優・三浦春馬は主人公・エレン役に抜てきされたその日から、劇中さながらさまざまな"壁"に真っ向から立ち向かっていく。

前編公開初日の8月1日、三浦が公式ツイッターでつぶやいた「素敵な経験、そして辛い経験もさせて頂いた」。初日舞台あいさつでは前日深夜に目覚めてしまったことを打ち明けるなど、複雑な精神状態だったことをうかがわせた。彼がこのモンスター映画で背負ったものとは? 後編となる『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』が9月19日に公開されるのを前に、そのすべてを告白する。

俳優の三浦春馬 撮影:WATAROCK

――いよいよ後編が公開されますね。

前編が公開されて早いもので。知人から「観たよ」と感想が届いて、周囲の反響も大きいのでとてもうれしいです。話題になったことをきっかけに、誰かの時間が楽しくなったり、話の種になったりするのであれば、それはすごく幸せなことだなと思います。これまでキャンペーンで各地劇場での舞台あいさつをやってきましたが、皆さんあたたかく迎え入れてくださり、すごくうれしかったです。

――前編と後編でエレン役の演じ分けは?

映画は前編と後編で分かれていましたが、1つの物語として捉えていたので、特別に演じ分けをしようとは考えていませんでした。ただ、後編になるにつれてエレンが「自分には何ができるんだろう」と考えはじめ、「自分が人類の力になれる可能性を秘めている」と気づけた時に、彼が少しずつ成長していきます。そこは観てくださる方に強く伝えていきたいと思いました。

やり場のないエネルギー、誰かのために何かをしたいという意志。それらが「普段の何倍もの力になる」ということが非現実的な映画の世界で描かれているわけですが、それを身近な生活の中に落としこんで観ていただくことはすごく難しい作品かもしれません。巨人の迫力がすごいですからね(笑)。でも観終わってリアルな世界で考えていただいた時に、「誰かのために何かをすることは、普段の自分よりも大きな力を発揮することができる」というメッセージが伝わるといいなと思います。

――前編公開初日の舞台あいさつで、前夜に「変な汗」をかいて目覚めてしまったとおっしゃっていました。どのような心理状態だったのでしょうか。

初日を迎えるまでのプロモーションをかなりやらせていただきました。原作ファンとしての心理も働いていたのか、気持ちが焦っていたのか……一方で、どんな初日を迎えるのか公開が楽しみでもありました。自分としてはもちろん、スタッフ、キャスト陣が一生懸命取り組んだ作品でもありますし、本当に多くの方が関わっている作品だからこそ、それが皆さんにどう受け止められるのか。たぶん、いろんなことが影響して目覚めてしまったんだと思います(笑)。

――それは撮影を終えてから徐々に感じていったことですか。

公開前日、突然そんな気持ちになったんだと思います。今まで経験したことがないくらい、たくさんプロモーションをさせていただいて、疲れてそのまま寝てしまう日もありましたし(笑)。

――ハードな番宣スケジュールも、なぜ前向きに取り組むことができたと思いますか。

撮影現場にいても番宣のスタジオにいても、今回の出演者の皆さんは「一人でも多くの人に観てもらいたい」という一心でした。自分も本当に好きな作品ですし、「届けなきゃ」という思いで、がんばりたいなと思ったんです。プロモーションで、いろいろなバラエティ番組に出ることも、とても勉強になる貴重な経験でした。

作品に興味を持ってもらうということが一番ですが、自分に興味を持ってもらうことももしかしたら作品に貢献することになるかもしれない。出演作をいろんな人に観てもらうためにできることはやっていきたいです。

――昔は違ったんですか?

20歳のころは未熟だったなと思います(笑)。もちろん、作品を観てほしいという気持ちは同じなんですが。以前は「演じていること」こそがすべてだと思っていて、「何を言えば世間に刺さるのか」みたいなことは考えたこともなくて…。今ではそんなことを考えるのも楽しいと純粋に思えます。

俳優として、これから先のことは分かりません。こんなこと考えずに、演技だけに向き合っていればいいのかもしれない。でも、作品は自分だけで完成するものではありません。みんながいい思いになればという思いで「全部頑張ろう」となるんです(笑)。