そのほくろ、もしかしたら皮膚がんかも?

ほぼすべての人に必ずあると言っていいほくろ。その数は個人差があるが、体のいたる所にある人が大半だ。 「泣きぼくろ」という言葉に代表されるように、ほくろはその人のチャーミングポイントと言われることもある一方で、気に入らない場所にある場合は美容整形で除去することも可能だ。

このように、いい意味でも悪い意味でも私たちの見た目や印象に影響を与えるほくろだが、実はこのほくろに姿形が似た皮膚がんがあることはご存じだろうか。

本稿では、南青山皮膚科 スキンナビクリニックの院長である服部英子医師の解説をもとに、皮膚がんの種類や検査・治療方法などについて紹介していこう。

皮膚がんの種類を学ぶ

皮膚がんは、皮膚を構成する細胞が悪性に変化したものの総称だ。主だった種類は以下の通り。

■基底細胞がん……表皮の基底細胞(表皮の下層に存在する細胞)などを構成する細胞から発病する

■有棘(ゆうきょく)細胞がん……有棘層と呼ばれる、基底細胞よりも表皮側に近い部分ががん化したもの

■ボーエン病……有棘細胞がん同様、表皮の有棘層の細胞ががん化したもの。増殖が表皮の中だけにとどまっていれば、転移するケースは少ない

■パジェット病……汗を産生する汗器官由来の細胞から発病する

皮膚がんはこのように複数の種類があるが、初期の皮膚がんはあまり痛みもなく、無自覚の症例が多いという。

「リンパ節や内臓に転移することはありますが、早期発見で転移までいかないものも多いです。胃がんなどのように重症化しやすいケースは、あまりないのではないでしょうか。皮膚がん全般は、60歳以上の高齢者で発症するケースが大半ですね。紫外線への暴露ですとか、慢性炎症の繰り返しなどが、皮膚がん発症のベースとしてありますので」。

ほくろと見間違えやすいメラノーマ

皮膚がんのおよそ50%は基底細胞がんと有棘細胞がんによって占められるなど、この2つが代表的存在と言える。そんな中、10万人に1.5~2人ほどの発症率で、年間1,500~2,000人ほどの患者を生み出している皮膚がんが、ほくろに似ている「悪性黒色腫」(メラノーマ)だ。

メラノーマは、メラニンを作る色素細胞「メラノサイト」が悪性化したことが原因で発症する。黒色調の色素斑や腫瘤(しゅりゅう)ができ、ほかの皮膚がんよりも、比較的転移しやすいと言われている。発症するはっきりとした原因はわかってはいない。

「メラノサイトは体中にあるため、メラノーマはどこにできてもおかしくはないのですが、日本人は末端にできやすい『末端黒子型』と言われています。すなわち、足の裏や手、爪などにできやすく、日本人はこれらの部位に30%くらいの割合で出現します。欧米の人は『表在拡大型』と呼ばれ、体などにできることが多いと言われています」。

メラノーマとほくろの簡単な見分け方

それではメラノーマの見つけ方、すなわちほくろとの見分け方にはどのようなものがあるのだろうか。服部医師は以下の3つの特徴が見られる場合、メラノーマと疑った方がよいと話す。

特徴1 色に濃淡があり、形がいびつなもの

「メラノーマでよく言われるのは、形が不整であることです。つまり、形がいびつだったり、左右で非対称だったり、黒色に濃淡があったりします。さらに、皮膚の一部が盛り上がっている場合や、凹凸がある場合もメラノーマの可能性があります」。

特徴2 直径が6mm以上のもの

「メラノーマは直径が6mm以上と言われてはいますが、全部が全部そうではありません。それに、普通のほくろでも6mmサイズのものもあります。6mm以上がメラノーマの『絶対条件』ではないため、それぐらいのサイズのほくろらしきものがあった場合には、大丈夫かどうかを病院やクリニックで見てもらうのがいいのではないでしょうか」。

特徴3 気づかないうちに出現したもの

何となくではあるが、自身のほくろの場所を把握している人も少なくないだろう。ただ、ある日ふと、見知らぬ場所にほくろらしきものを見つけたら、急速に成長したメラノーマの可能性もあるため要注意と覚えておこう。

これらは一般的なメラノーマの見分け方だが、中には特有の黒い色素のない「ア・メラノティック・メラノーマ」と呼ばれるタイプもあるという。肌と同じか、やや赤みがかった色で、ちょっとした傷やたこのように見えるという。ただ、10万人に1.5~2人ほどの発症確率のメラノーマの中でも、さらにまれな症例。それらしきものを見つけても、そこまで神経質になる必要はないと言えそうだ。

検査・治療方法を知る

万一、メラノーマとおぼしきものを見つけてしまった場合は、皮膚科や病院などで通常の「視診」もしくは、ほくろを拡大して観察する「ダーモスコピー」と呼ばれる検査を受けるのが一般的だ。

「ダーモスコピーの結果も疑わしい場合、『生検』という皮膚の一部を採取する検査をします。生検してメラノーマだった場合は、すぐに患部の拡大切除手術をしたほうがいいですね。ダーモスコピーは普通の皮膚科でもできますが、判断が難しいため、セカンドオピニオンを推奨する場合もあります。治療は患部の拡大切除手術と所属リンパ腺への転移がないか確認する『センチネルリンパ節生検術』か、あるいは所属リンパ節転移があった場合は『所属リンパ節郭清術』をします」。

切除後は、抗がん剤やインターフェロンを使用するが、初期段階で切除した後の全身検査で問題なければ、抗がん剤使用などを控えるケースもある。服部医師は、「早期発見・診断をされれば手術をするのみですみますが、治療後も再発・転移がないか定期的な検査・診察は必要になってきます」と話す。

「悪性」という名が示す通り、メラノーマは放置しておけばリンパ節などに転移して死亡する可能性もある。それだけに、日ごろから自分の体や体調に気を配るようにしておき、少しでも不安に思ったら医療機関を受診するような習慣を持つようにしておこう。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 服部英子(はっとり ひでこ)

東京女子医科大学卒業。皮膚科専門医。日本皮膚科学会、日本レーザー学会、日本臨床皮膚科学会、日本アレルギー学会に所属。大学卒業後に東京女子医科大学病院やJR東京総合病院の皮膚科に勤務した後、2005年より南青山皮膚科 スキンナビクリニックの院長を務める。