最新の宇宙事情を解説するシリーズ『宇宙新時代』が、21日からドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」で3回にわたって放送される。

シリーズ『宇宙新時代』

初回は「月資源開発レース」。1969年、アポロ計画によって人類が初めて月面に着陸した。アポロ11号船長のニール・アームストロングは「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という言葉を残した。その後、宇宙開発競争が激化。時代は変わり、現在は民間企業を対象に月面無人探査を競うコンテスト"グーグル・ルナー・Xプライズ"(GLXP)なども行われ、月が以前にも増して身近な存在になりつつある。

そもそも人は、なぜ「われ先に」と月面着陸を目指すのか。複数の民間企業が参加しているGLXPには賞金が設けられ、その総額は3,000万ドル。月着陸船と月面探査機を作り、課題をクリアすると賞金を獲得できる。技術競争の先にあるのは、月に眠る豊富な鉱物資源。着陸することはもちろんのこと、地面を掘削し、その資源を地球に持ち帰ることが今のところ「月資源開発レース」のゴールとなっている。

月の土壌に含まれる「ヘリウム3」は3000年分のエネルギーに相当することから、"夢のエネルギー源"といわれている。地球では核兵器製造時の副産物として微量に生成されるもの、核廃棄物を出さない原子力エネルギー。月では太陽が生み出すヘリウム3が太陽風に乗って常に飛来し、その影響で土壌は大量のヘリウム3を含有している。埋蔵量は少なくとも100万トン。需要は中国でおよそ年間45トン、全世界で230トン、1トンの価値は約110億ドルともいわれている。

そのほかにもプラチナなどの貴金属やユウロピウムなどのレアアースも注目を集めている。特にレアアースは中国が全世界生産量の95%以上を占めており、輸出を制限していることから欧米との対立につながっている。ハイテク産業での需要が高く、価格は1グラム1,000ドル以上。同番組では「戦争や対立が起こるのは資源や土地に限りがあるからです。宇宙へ行けば問題は解決します」と結論付けている。

2013年12月14日、中国の嫦娥3号は旧ソ連、アメリカに続いて月面軟着陸を成功させた。このことを脅威と捉えたNASA(アメリカ航空宇宙局)は方針を転換。商業目的で月に行くことを認め、月探査で民間企業と協力することを決定した。

残された課題は、月の所有権に関する法律が未整備であること。月での活動を制限する法もなく、まさに"ゴールドラッシュ"状態の競争がすでにスタートしている。採掘をはじめ、月に住みつく未来の人々に待ち受けているのは本当に「早い者勝ち」なのか。"限りある土地"の月を巡って、宇宙開発の発展と同時に人類の真価が問われようとしている。

初回の「月資源開発レース」(8月21日23:00~24:00/8月22日18:00~19:00/8月28日12:00~13:00)では、GLXP参加チームの紹介や、溶岩洞で月面基地を作る技術なども解説。8月28日の第2回は「小惑星を回避せよ」(8月28日23:00~24:00/8月29日18:00~19:00/9月4日12:00~13:00)、9月4日の第3回は「人類、火星へ」(9月4日23:00~24:00/9月5日18:00~19:00/9月11日12:00~13:00)が放送される。

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