――第2章の「イカと恥じらい」は、ロケ先で原稿の締め切りに追われた時の一幕。食糧をコンビニで買い込み、「パソコン以外に娯楽は1つも持ち込まない」と気合を入れ、ホテルに缶詰め状態で一気に書き上げる。その誘惑されるものの一例として「未読の本」のほか、「やりきっていないゲーム」とある。ミムラがゲームをする姿…なかなか想像できなかったので真相を確かめた。

いまだにスマートフォンを使わないのは「きっとゲームをやり過ぎてしまうから」という理由です。同じ理由からテレビもあまりつけません。引っ越しの際に一念発起して全てのゲーム機器を人に譲り、今は何ひとつ持っていません。

それくらい極端なことをやらないと、ゲームの誘惑には勝てませんでした。数千円で何百時間と遊べるのですから、ゲームのコストパフォーマンスってすごいものですよね。

育成系やRPG、格闘系パズル系となんでもやりましたが、印象に残っているのはイタチョコシステムの『あの素晴らしい弁当を2度3度』です。当時はまだフロッピーディスクでした。独特の世界観と、そばとおはぎとトマトのみという妙な弁当がやたら売れたりのナンセンスで、やっている間は次元のねじれに迷い込んだようでした。

これを書くために調べたら、アプリでもできるようになったそうで! どうしょうダウンロードしたい、と思ってしまいました。気に入っていたシリーズの発売等聞くといまだにそわそわします。

大人になって手に入れた"秘密基地"

――ミムラは2007年に「一人になれる場所」を手に入れるために、築40年以上の別宅(秘密基地)を借りている。どのくらいの頻度で通い、そこではどのようなことをして過ごしているのか。「エスケープする場所は必須ではなくなった」とも書いてあるため、心境の変化についても聞いた。

ミムラの初エッセイ本『文集』(SDP)

人が遊びにくる事が多く、後は本の整理がてら読書をしに行きます。(自宅→秘密基地と本を運び、不要な物があれば整理、と代謝をよくしないとすぐにいっぱいになるので)「頻度」が一定であればいいのですが、定時で終わる仕事でもないのでそうもいきません。数日通い詰めることもあれば、1カ月ちかく行けない事もあり、ばらばらです。

ネーミングからして(「秘密基地」や「芝生部屋」)遊びに行く場所にしておきたいようで、台本を読んだりはあまりしません。原稿は何度か仕上げていますが、仕事で泊まるホテルや図書館の隅っこや広めのカフェ等自分の部屋でない場所の方が進みがよかったです。それも5年ほど前の話で、だんだん自宅に居てもちゃんと精神的に「籠(こも)る」ことが可能になったので、問題なく書き上げられるようになりました。

今の夫が精神的なくつろぎを与えてくれるので、自宅でも秘密基地と同じようにワクワク楽しく、ゆっくりのんびりできるようになり、今はもう避難所としては不要となりました。単純に本や資料を置いておく場としては必要なので、もうしばらくはこのままと思います

――今年7月27日にフジテレビ系で放送されたトーク番組『ごきげんよう』に出演。「自分が一番大切なもの」の重要性について語っていたが、自身のそのことには言及していなかった。今、一番大切なものは?

今の夫です。

既婚者としては当たり前のツマラナイ回答で恐縮ですが、これを断言できるようになって、随分いろいろ楽になりました。まずは夫が安全で健康であること。その上で快く仕事を支えてくれる今のような環境なので「では私は大好きな仕事に張り切ろう」となり、以前よりずっと集中できるようになりました。

どんなに仕事(役者業)が大好きでも、他の職業よりも私生活と癒着した部分が多くすっぱりと別れられるものでないという性質の職種でも、辞めることは可能です。それに対して「自分であること」はどれだけあがいても死ぬまで続きます。どちらを軸にしなければならないかは明確。

「役者でいられないくらいなら死ぬ!」という情熱のある方、仕事=人生の方はかっこいいなぁという矛盾した憧れも持ってはいます。しかし30年自分という生き物で生きてきて、どうやら私はそういう生き方では安心して暮らせない性分のようです。