東芝は20日、不適切な会計処理問題を調べてきた第三者委員会(委員長=上田広一元東京高等検察庁検事長)による調査報告書の要約版を発表した。それによると、2008年度~2014年度4~12月期の期間に計1,562億円の利益(税引き前)を水増ししていたことがわかった。修正額は、自主チェック分が44億円、第三者委員会認定分が1,518億円となる。

本調査における連結会計年度別修正額(出典:東芝Webサイト)

経営トップが「かさ上げ」認識

報告書は、不適切な会計処理の中には「経営トップらまたは社内カンパニーのトップらが、『見かけ上の当期利益のかさ上げ』を行う目的を有していた事実が認められる」と認定。「経営トップらの関与等に基づき組織的に不適切な会計処理が実行・継続されることを想定し、これを防止するためのリスク管理体制等はとられておらず、監督機能も十分に機能しなかった」と批判した。

また、毎月の定例会議などでは、経営トップが「チャレンジ」と称して設定した収益改善の目標値を示し、目標達成を強く迫っていたと指摘。業績不振のカンパニーに対しては、収益が改善しなければ事業撤退を示唆することもあったほか、特に不適切会計処理が目立った2011年度から2012年度にかけては、厳しい「チャレンジ」数値が設定され、各カンパニーは強いプレッシャーを受けていたという。

上司の意向に逆らえない企業風土

同社の企業風土についても、「上司の意向に逆らうことができない企業風土が存在していた」と批判。問題が発生した場合には、経理規定に定められた明文上のルールに基づく会計処理を行う前に上司に承認を求め、その承認が得られなければ実行できないという事実上のルールが存在したため、仮に上司の承諾が途中で得られなかった場合には、明文上のルールに基づく適切な会計処理自体が行われないという事態に陥っていたという。

さらに、同社の役職員は数値上の利益額を優先するあまり、適切な会計処理に向けた意識が欠如していたり、必要な知識を持っていなかったと指摘。不適切な会計処理が継続的に行われてきた要因のひとつとしては、それぞれの案件が「外部からは発見しにくい巧妙な方法で行われていた」ことを挙げた。

「チャレンジ」廃止求める

再発防止策としては、「チャレンジ」の廃止を求めるとともに、少なくとも幹部職員については、関与の程度などを十分に検証した上で「人事上の措置(懲戒手続きの実施を含む)を適切に行うことが望ましい」と提言した。

同社は、今回の報告書を精査し、過去の決算を訂正した上で、2014年度の決算予想を確定する。また、21日には田中久雄社長らの記者会見を予定している。