ウォルト・ディズニーが遺した最大のプロジェクトといわれる、すべてが可能になる理想の世界"トゥモローランド"が、ウォルトの死から約50年の時を経て、ついに形となった。ウォルト・ディズニー社の保管庫に眠っていた数々の資料をもとに、フィルムメーカーたちがウォルトの夢を引き継ぎ、ディズニー映画『トゥモローランド』(公開中)の中で描き出したのだ。

このミステリー・アドベンチャーに挑戦したのは、『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』で2度のアカデミーション長編アニメーション賞に輝き、トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』でも成功を収めたブラッド・バード。彼が監督・製作・脚本を務め、テレビシリーズ『LOST』のクリエイターとして脚光を浴びたデイモン・リンデロフを共同脚本家に迎えた最強コンビで、壮大なプロジェクトに挑んだ。

ヒロイン・ケイシーが"トゥモローランド"を歩いている場面

ブラッド・バードとデイモン・リンデロフの2人だからこそ生まれたと言える、ディズニー映画であり、ミステリー・アドベンチャー大作。彼らはウォルトが夢見た未来都市"トゥモローランド"をどのように描いたのか、また、主演のジョージ・クルーニーにまつわるエピソードなど、ブラッド・バード監督に製作秘話を聞いた。

――ディズニー作品らしいメッセージが根底にあり、アクションやミステリーなど、さまざまな要素の詰まった映画でした。製作において、"ディズニー映画"であるということをどれくらい意識していたのでしょうか。

ブラッド・バード監督
1957年アメリカ・モンタナ州生まれ。ウォルト・ディズニー・スタジオで指導を受けた後、カリフォルニア芸術大学でアニメーションを学ぶ。『Mr.インクレディブル』(04)、『レミーのおいしいレストラン』(2007年)でアカデミー賞長編アニメーション賞受賞。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年)で実写長編映画デビュー

もちろんとても意識していましたし、それに関して興奮を抑えることはできませんでした。なぜなら、ディズニーは私が子供のころに多大な影響を受けた人物でしたから。特に、私自身が信じている未来というのは、ウォルト・ディズニーが語っていたものと共通するものでした。「未来というのは、起こるものではなく作るもの」。私もそう思いますし、楽しく、努力していくものだと。そして、恐れるものではない、受け入れていかないといけないものだと思います。

――CGやセット、そして実在の都市でも撮影し、"トゥモローランド"を作り上げたそうですが、この理想の未来都市を描くにあたってこだわったことを教えてください。

とにかくリアルに感じてもらいたい、鮮明な夢になるようなものにしたいという思いがありました。また、都市であってもキャラクターの一つであるようにとの思いもありました。いろいろ姿を変えていくものでしたので。

――都市をキャラクターとして考えられていたんですね。

初期の"トゥモローランド"は約束に満ちた、約束の場所というような雰囲気が出ているのですが、ケイシーが訪れる"トゥモローランド"は80年代っぽさがあり、80年代バージョンの未来というものになっています。その後の"トゥモローランド"は、閉ざされ始めているような情景になり、未来というのは常に変わり続けているというのを伝えているんです。未来は日々変わっていくものなので、ちゃんとお世話をして、明日というものに対して食事を与えないとうまく育っていかない。生き物と同じですね! ちゃんと食事もきちんと与えて世話をしていればよく育っていくんですが、飢えさせてしまうと悪いものになってしまう。私たちは長らく飢えさせているところがあるので、ちゃんと世話をしてあげないといけないと思います。

――なるほど。ちゃんと食事を与えないといけないですね。この"都市をキャラクターとして描く"というのは、アニメーション出身のブラッド・バード監督ならではのように感じます。

そうですね。アニメーションの経験から、すべてを視覚化する、どう物が動くのかをわかっていないといけないというのがあります。そして、何でも動きに対して個性、性格のようなものを与えないといけないというのは、私が幼い頃にディズニーで学んだことでもあるので、今回の街・都市に対するアプローチも性格を与えるというものでした。

――きっかけはディズニー作品だったんですね!

子供の頃にディズニー作品を見た時に、砂糖の入れ物自体が命を持っていたんです。そういう考えは頭になかったので、すばらしいことだなと思った経験があります。

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