月経量が多い「過多月経」
あなたは、生理のときの出血量が多い方ですか? 人と比べられないため、量が多いかどうかわからないという人もいると思いますが、もし昼間でも夜用のナプキンを使うほどなら「過多月経」かもしれません。今回は、過多月経の症状や原因として考えられる病気のリスク、治療法について詳しく解説します。
どんな症状があると過多月経?
過多月経とは、文字通り、経血量が異常に多いことを指します。経血量は自分で測ることができず、個人差もありますので一概には言えませんが、婦人科では経血量が140ml以上の場合を過多月経と判断しています。
量の目安として、2時間おきにナプキンを交換する程度であれば、正常な量と言えます。それに対し、生理用のナプキン1枚では1時間ももたない人や、昼間でも夜用の吸収量の多いナプキンを使わなければいけない人は、過多月経を疑った方がいいでしょう。また、生理の際にレバーのような固まりが出るのも症状の一つです。ときどき出る程度なら問題ないことが多いのですが、続けて何度も出たり、大きな固まりが出たりする場合は、特に注意が必要です。
さらに過多月経の人には、「鉄欠乏性貧血」もよく見られます。これは、出血により鉄分が不足するために起こるもので、動悸(どうき)や息切れ、身体の重だるい感じなどが主な症状です。
放置すると、病気を進行させるリスクが!
過多月経の原因として、婦人科系の病気が考えられます。まず疑われる病気は、子宮に良性の腫瘍ができる「子宮筋腫」や、子宮内膜やそれに類似した組織が子宮以外の場所にできてしまう「子宮内膜症」です。ホルモンバランスの崩れが原因となる「子宮内膜増殖症」という病気も考えられます。また、まれではありますが、「子宮体がん」や「子宮頸(けい)がん」が潜んでいることもあります。
低用量ピルを使うと生理が軽くなることも
病院で過多月経と診断された場合、原因となる病気の有無やその進行度、症状、体の状態などに応じて、さまざまな治療が行われます。
一般的な治療法の一つが、ホルモン療法。低用量ピルなどのホルモン剤を使ってホルモンバランスをコントロールし、経血量を抑える方法です。なお、体の状態や既往歴によっては、低用量ピルの処方ができない場合もありますので、医師に相談しましょう。
貧血を伴う場合は、あわせて鉄剤の服用などの貧血治療を行います。漢方治療や、月経痛の痛みを緩和するために鎮痛剤が使われることもあります。また、過多月経が子宮筋腫や子宮内膜症による場合は、それらの疾患の治療を行います。薬物療法がメインですが、貧血の程度や子宮筋腫・子宮内膜症の状態によっては手術が必要な場合もあります。
「これくらい大丈夫」と軽視されがちな過多月経ですが、放っておくと重い病気を進行させることになりかねません。過多月経の原因として多い子宮筋腫や子宮内膜症は、そのままにしておくと将来、不妊の原因になることもあります。「もしかして、過多月経?」と思ったら、早めに婦人科を受診するようにしてください。
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記事監修: 善方裕美 医師
日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。
主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など