観光客でにぎわう小樽運河。そのはずれにひっそりと、地元の人が足しげく通う「シロクマ食堂」がある。メニューを見ると、小樽なのに「名古屋風カレーうどん」、はたまた店名がついた「シロクマアイス」や「クロクマアイス」など。「何なのこのお店!? 」ということで、気になる点満載のシロクマ食堂へ足を運んでみた。

店内にはかわいいシロクマがいっぱい!

北海道なのになぜか名古屋メニューが!

同店の「名古屋風カレーうどん」(800円)は、特に女性に人気があるという。そもそもなぜ北海道なのに名古屋風!? その理由を店主の本間学さんに聞いた。

「食材や器を探すために日本各地を食べ歩きした際、名古屋で出合ったおいしいカレーうどんが原型になっています。改良を重ね、"名古屋風"と名前がついているものの、今ではシロクマ食堂オリジナルの味になっています」。

ハマる人が続出の「名古屋風カレーうどん」(800円)

クリーミーでスパイスの利いたカレーの味と上質な和風だしの味。この両方がしっかりと立っていながら、絶妙なバランスが保たれている。汁をたっぷり吸ったお揚げがこれまた絶品なのである。気がつけば麺と具はいつの間にか完食。スープまでも、飽きることなく自然と飲み干してしまうのだ。食べ終わって思ったことは「次、いつ来よう? 」。スケジュールを真剣に考えてしまった。

男性に人気があるのは「イタリアン」(850円)。太い麺にトマトソースがしっかりと絡みつき、存在感のあるソーセージやトロトロ卵もうれしい。食べてみれば「なるほどね! 」と、男性ウケするのも納得の濃い味&ボリューム満点の一品だ。

フライパンに入って出てくる「イタリアン」(850円)は見た目から食欲が刺激される

「ヒグマ食堂」になっていたかも?

店名の由来は、動物が大好きな本間さんがテレビでシロクマの赤ちゃんを見てビビッときたことから。「見たのがヒグマだったら、"ヒグマ食堂"になっていたかも」と、店名をそんなふうに決めてしまう、肩に力が入っていない感じが何ともおもしろい。

シロクマはメニューにも登場している。「シロクマアイス」(250円)、さらには「クロクマアイス」(350円)まであるのだ。

牛乳のやさしい味がする「シロクマアイス」(250円)

「シロクマ食堂だから"シロクマアイス"にしてみた」という本間さんだが、本間さんが"日本で一番おいしい"と感じた、牛の餌からこだわった牛乳で作られたバニラアイスを千葉県から取り寄せているらしい。また、シロクマアイスにコーヒーをかけて出したところ、客が「クロクマアイスにしたら? 」と提案してくれたのでその名になったそう。料理へのこだわりに比べ、ネーミングはかなりゆるいようだ。

そして、店内にはシロクマグッズが所狭しと並ぶ。シロクマ食堂になってからシロクマのことが気になりだし、グッズを買い集めたり、客や知人の雑貨作家からもらったりして、だんだん増えていったそう。

店内のあちこちにシロクマ出没!

くつろぐシロクマたち

「シロクマ食堂」と描かれた絵は作家からのプレゼント

石から顔を出した店主の名刺とペーパークラフト「シロクマ箱」

エプロンには「シロクマ食堂」の文字が

店内では地元作家の雑貨も販売している

海鮮丼とそばも本気の味

もちろん、海の街・小樽らしいメニューもある。魚は本間さんが信頼する魚屋から仕入れており、本マグロやホタテ、シャコなど季節の魚介がたっぷりのった「海鮮丼」は1,500円。夏には生ウニ入りの「スペシャル海鮮丼」(2,000円)も人気だ。ウニは本間さんが殻をむいて作った自家製塩ウニを使用。もともとは裏メニューだったが、リクエストが増えて正式メニューになったそうだ。

本マグロをメインに、その時々で内容が変わる「生本マグロの海鮮丼」(1,500円)

不定期で打っているそばも、キリッとしたたたずまいがある正統派。それもそのはず、本間さんは以前、気仙沼でそば店を営むそば職人だったのだ。なお、そばを提供する「手打ちそばの日」は同店のブログで告知している。

不定期で打たれるそばを楽しみにしている常連客も多い。「もりそば」(700円)

名古屋風カレーうどん、イタリアン(スパゲティ)、海鮮丼、そば……。そんな店の名前がシロクマ食堂なんて、「何がしたいんだっ! 」と、突っ込みたくなるかもしれないが、「お客様にいかに喜んでもらえるか。いかに驚いてもらえるか。それを考え続けたカタチが、シロクマ食堂なんです」という本間さんの言葉に、"お客さんが第一"という気持ちがうかがえる。

黒板のメニューは一例といってもいいほど、実は裏メニューが多い

目指すは「かもめ食堂」と「深夜食堂」の間

常連客は「同じ料理でも、味がどんどん進化しているみたいだ」と言う。また、客との会話の中から生まれる料理も多いそう。「作れるものは何でも作ります! ひとりで料理しているので時間がかかってしまいますが」と言う本間さんの目指すところは、やってくるいろいろな人の顔を見ながら丁寧に料理を作る映画の「かもめ食堂」と、客のリクエストに何でも応える漫画の「深夜食堂」の中間の店だそうだ。

のれんはシロクマ食堂だが、ネオン看板は以前あった「お食事の店 三平」のまま

店主の本間学さん。なんとなくシロクマに似ている!?

一度、その不思議さと味、本間さんの心意気に惹かれてしまうと、なぜかまた行きたくなってしまう。そんな地元の人にも人気のシロクマ食堂に、小樽に来た際はぜひ訪ねていただきたい。

●information
シロクマ食堂
北海道小樽市色内3-6-3

※記事中の価格・情報は2015年1月取材時のもの。価格は全て税込

筆者プロフィール: 楢戸 ひかる(ならと ひかる)

1969年生まれ 大手商社勤務を経てフリーライターへ。中学生と小学生の男児3人を育てる主婦でもある。生活に役立つ情報を「主婦er」にて更新中。また、長期投資を始めた日々の記録をメルマガ「主婦が始める長期投資」で配信中。メルマガ申込みは「主婦er」より。