毎月の積立をきちんとして、家計簿もつけて家計管理もしっかりできているのに、なぜか貯蓄が殖えにくい。そんな風に悩んでいる人はいませんか? そういう人はもう1度、家計を見直して、変動費の削減ともう一段の仕組みづくりをしてみませんか?

家計管理の基本は、支出を固定費と変動費に分けること

まず家計管理の基本は、支出を固定費と変動費に分けること。固定支出とは、家賃や保険料、こづかい、習い事代など、毎月決まって出ていくお金。原則、削減がむずかしい支出です。固定支出は、できれば銀行口座から自動引落しにし、"ないもの"として管理します。

貯蓄の基本は先取りなので、手取り収入から貯蓄額を差し引いて、残りで生活するのが基本。さらに言うと、手取り収入から貯蓄と固定費を差し引いた残りが「変動支出」(変動費)。つまりおサイフから出ていくお金です。

変動費とは、食費、日用雑貨費、被服費など。この部分は自分の努力で節約できますので、きちんと予算化して、出費を抑えるようにするのがお金をさらに貯めるコツです。

「毎月きちんと貯めているつもりなのに、なぜか、貯蓄が増えない」

表は年間貯蓄が73.2万円のAさんの家計簿。固定費と変動費に分けて、きちんと家計管理をしていますが、年に2~3回は積み立てている貯蓄を切り崩すことがあり、実際には年50万円程度の貯蓄額。現状300万円程度しか貯まっていません。

「毎月きちんと貯めているつもりなのに、なぜか、貯蓄が増えないのです」。

Aさんの家計簿

Aさん宅はボーナスがないということなので、その点は家計に余裕がなく、何かあったらボーナスから補填、ということができない点が、家計管理が大変になっている理由のひとつ。

そこでまず第一に、変動費についてもう一段の見直しをして、年間貯蓄額を100万円まで引き上げる努力をしてみましょう。表の中でいえば、食費を月4万円から3万5000円に、外食費を月2万4000円から1万8000円に、被服費を1万2000円から1万円にそれぞれ節約。これで合計1万3000円分の家計が浮きました。これだけでも、年間15万6000円分の貯蓄を殖やすことができます。

"マイブーム"になっているものがムダな出費になっている可能性

変動費はお金の使い方の癖が出やすい項目。年に1度程度は、ムダが多そうな費目をピックアップして、1、2カ月細かく記録してみることで、傾向が見えてきます。たとえば、食費でも、つい、それほど必要ではない野菜ジュースをコンビニで買ってしまっている、とか、どうにもやめられないスナック菓子があるなど、"マイブーム"になっているものがムダな出費になっている可能性もあります。

ムダが気になった支出の中で、本当に必要か、やはり残しておきたいのか優先順位をつけて、優先順位の低いものからカットしていけば、まだまだ貯められるお金が出てくるはずなのです。これは、妻だけでなく、夫と2人で努力することが大切。夫にも、協力してもらうことで、2人で協力してムダ撲滅ができるもの。特に年末はこうした支出の癖を見直すいいチャンス。毎年、年末を変動費の予算の見直しをするタイミングと決めて実行するのもいいですね。

毎月発生するわけではない「特別支出」に家計が左右されてしまうのも問題

Aさん宅の家計でもうひとつ問題なのは、毎月発生するわけではない「特別支出」に家計が左右されてしまうこと。特別支出とは、年に1度支払う税金や保険料のほか、結婚式や葬式などの冠婚葬祭費、電化製品の修理費や買い替えなど、予期しない出費も含まれます。こうした出費を日々の家計から出していると、どうしても赤字になってしまい、結局、月々積み立てている貯蓄に手をつける羽目になるのです。

こうした「特別支出」用には、特別支出用として、別にお金をプールしておくことが大切。こうすれば、月々の家計が安定し、貯蓄の切り崩しを避けることができます。

Aさん宅も早速、月々の積み立てとは別に特別支出用積み立てを2万5000円して、毎月の固定費、変動費以外の特別支出をここから出すように変更してもらいました。

せっかく貯めても交際費や家電品の修理代などの臨時支出に使ってしまってお金が残らないのは、上手にお金が貯められていない証拠なのです。

1年間に必要な特別支出はいくらなのかを年末に見通し

特別支出についても、1年間に必要な特別支出はいくらなのかを年末に見通してみて、毎月特別支出用にいくらずつプールしていくか、見積もりをする習慣をつけるといいでしょう。結婚式なども、ある時期、頻繁に呼ばれますが、パタっと呼ばれなくなる時期もあります。そうすると、特別支出の見積りも減らしてもいいかもしれません。

また特別支出と同じように、特別収入もあります。たとえば、住宅ローンを組んでいる人は、税金の還付金などがそれにあたります。この還付金も特別収入としてきちんと管理。これを固定資産税などの特別支出にあてるなど、うまく管理していけるといいですね。

家計は月々で見ると同時に、年間で見通すことも大切です。年末こそは、1年の計として、家計をじっくりチェックして、変動費の見直しと、特別支出の積立額をセットしなおす作業をぜひ夫婦でしてみてください。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。