その6)機内の空気をクリーンに保つ設備

機内の空気をクリーンに保つ工夫もされている。バクテリアや有機化合物、オゾンなどを吸収・除去する空気清浄フィルターが設置され、換気は2~3分ごとに行う。従来の金属中心に設計された旅客機は腐食を防ぐために常に換気しておく必要があったが、その換気とは違い、空気を清潔に保つ目的がある。座席の一定ゾーン(エリア)ごとの温度調整も可能になっている。

ボーイング787も、従来は2カ所だった給気口を4カ所にしてより空気をクリーンにする工夫をし、さらに787は機内の湿度を従来機の2~3倍の高さに保つ、ほかの機種にはない優れた機能も持つ。

金属素材の旅客機は腐食を防ぐため、盛んに換気されていた。そのため、寒く感じることも多かったが、カーボン素材の多用により随分改善されている

その7)燃費効率が25%も向上

海外旅行で飛行機を利用すると必ずと言っていいほど燃油サーチャージを徴収されるが、それは飛行機を飛ばすのに必要なジェット燃料の価格が高くなったから。そのため、燃費効率がいい旅客機ほど航空会社に喜ばれる。

そこで、A350はカーボン素材の多様、最先端の空力性能、工夫されたエンジンなどで同規模機(ボーイング777)より燃費効率を約25%も向上させた。一方のボーイング787も、燃費効率を従来の同規模機(767など)より約20%向上させている。

燃費効率をより向上させるべく設計された主翼。突風が吹いた時などに揺れが機内に伝わらないようプラップの調整を行うなど、優れた機能を合わせ持つ

その8)静か過ぎる!? エンジン

燃費効率の向上に多大な貢献をするのがエンジンなのだが、A350の「トレントXWB(ロールスロイス社製)」は騒音もかなり低く抑えられている。ICAO(国際航空民間機関)が定める騒音レベルでいえば、「チャプター4」を大きく下回る。チャプター4は100人乗りの小型機の騒音レベルであり、それよりも16EPNデシベルも低い。騒音レベルが低ければ、それだけ機内は静かで、より快適になる。

A350-900のエンジン「トレントXWB-84」。「いま飛んでいる中で最も燃費効率のいいエンジン」(エアバス社)。推力は374kN

その9)排ガスを25%削減し環境に配慮

エンジン音が低ければ、それだけ環境にも優しいといえる。また、前述した燃費効率の良さも環境問題への配慮に直結する。その点、「トレントXWB」のCO2排出量はボーイング777-200ERと比べると約25%も少ないとされる。CO2の排出量についてはボーイング787も大きく削減されており、767などの従来機に比べると20%ほど少なくなっている。

A350の巡航速度はマッハ0.85

その10)より多くの航空路を飛べる優れた能力

A350はエンジン2基の双発機だが、双発機の場合、「Extended-range Twin-Engine Operation Performance System=ETOPS(イ―トップス)」と呼ばれる飛行制限を受ける。これは、分かりやすくいえば洋上を飛んでいる時に片方のエンジンが停止してしまった場合、緊急着陸できる空港まで1基のエンジンで飛び続ける必要があり、その1基のエンジンで飛べる制限時間のこと。

A350(-900)はすでに欧州航空安全庁(EASA)から180分超のETOPS承認を受けており、初号機の就航(商業飛行)前にここまでのETOPSが認可されたのは初めてのこと。同機の信頼の高さがうかがえる。ETOPSの時間が長ければ、それだけ陸地から遠い洋上の飛行が可能になり、就航路線や飛行航路の選択肢が広がる。ということは、乗客の利用機会もそれだけ広がるということだ。

A350-900は航空会社の選択により、300分、最大370分のETOPSが可能

このほかA350XWBは、同社のひとつ前の新型機A380のアヴィオニクスを改良した電子機器が使われ、パイロットや客室乗務員の休憩スペースの位置を工夫しより多くの座席を設置できるようにしているなど、多くの最新技術の採用と工夫がされた旅客機。2014年末から順次、航空会社に納入されて行くので、就航路線を調べて実際にその乗り心地を体験してみるといだろう。

筆者プロフィール : 緒方信一郎

航空・旅行ジャーナリスト。旅行業界誌・旅行雑誌の記者・編集者として活動し独立。25年以上にわたり航空・旅行をテーマに雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアで執筆・コメント・解説を行う。著書に『業界のプロが本音で教える 絶対トクする!海外旅行の新常識』など。