11日の日経平均は、343円高の17,124円と急伸しました。「安倍首相が(来年10月に予定されている)消費税率10%への引き上げを見送る判断を行った後に、国民に信を問うため早ければ来週にも衆議院を解散する公算が強まった」という内容の報道が相次いだことを受け、日経平均が急伸、為替は一時1ドル116円まで円安が進みました。

11日のNY市場では、NYダウは1.16ドル高の17,614.90ドルと小幅ながら5日最高値を更新しました。CME日経平均先物(円建て)は日本時間12日午前7時現在、17,355円と11日の日経平均終値を231円上回っています。為替は、午前7時現在、1ドル115.76円です。

(1) 報道が事実ならば、日経平均が18,000円に到達する時期が早まる可能性も

報道が事実であるか否か、現時点で判断できません。ここでは報道が事実と仮定した上で、日本株への影響を考えます。

結論から言うと、消費増税を1年半くらい先送りすることを決めた上で、解散総選挙を行うならば、外国人投資家の買いが増えて日経平均が18,000円に到達する時期が早まると考えます。私は現在、「来年3月に日経平均は18,000円」と予想していますが、年内に18,000円に達する可能性が高まります。

日経平均日足:9月1日~11月11日

日本株の動きは、ほとんど外国人の売買で決まります。外国人投資家は、売る時は下値を叩いて売り、買う時は上値を追って買ってくるからです。上のチャートでわかる通り、10月からの日経平均は、外国人の売買で乱高下してきました。

  1. 外国人の投げ売りで急落

  2. 外国人の売りが減少して反発

  3. 外国人の強引な買いで急騰

  4. 外国人の買いの勢いが落ちて調整しかかっていたところ、解散総選挙のネタが出て再び外国人の買いが増える兆し

(2) 外国人投資家から見ると、日本株は出遅れ

国内の個人投資家には、日経平均は「かなり上がってしまった」という感覚をお持ちの方が多いかと思いますが、外国人投資家には、違った見え方になります。

日経平均と、ドル建て日経平均の推移:2012年11月5日―2014年11月11日

(注:2012年11月5日を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成)

外国人投資家から見た日本株のパフォーマンスは、ドル建て日経平均にあらわれています。私たちが普段見ている日経平均と比べると、かなり上昇率が低いことがわかるでしょう。

ドルを円に転換して日本株に投資している外国人にとっては、日経平均が上がっても、円安が進めば、その分、投資価値は目減りします。それは、私たちが外国株に投資している時に株が上がっても円高になると、投資価値が目減りするのと同じことです。

足元、日経平均は急騰しましたが、同時に円安が進んでいますので、外国人投資家にとっては、その分、投資価値の増加は抑えられています。

外国人投資家が10月前半に日本株を投げ売りしましたが、彼らの気持ちを代弁するならば、「あまりにパフォーマンスが悪いから日本株は持っていても仕方ない」というところでしょう。ところが、その後、日銀の追加緩和や(事実かどうか不明ながら)解散総選挙のネタまで飛び出したわけです。「(ドル建て)日経平均は、これまでの上昇率が低いので、今から買っても遅くない」という気持ちに変わる外国人投資家が増える可能性があります。

(3) 消費増税延期ならば、来期の増益確度が高まる

消費増税先送り、解散総選挙ならば、なぜ、日本株が買われるのでしょうか? 一番大きいのは、来期増益のイメージを描きやすくなることです。今期(2015年3月期)の業績は円安効果でこれから上ぶれが期待されますが、続く来期(2016年3月期)もさらに増益する確度が高まります。

来年10月に消費増税実施ならば、来年度の下期(2015年10月―2016年3月)に企業業績が落ち込む不安が生じます。したがって、来期増益のイメージを持てないわけです。

なお、念のために申し沿えますが、私は消費増税の延期を支持するものではありません。増税延期は、日本にとって問題の先送りにしかならないと思います。ただし、日経平均は、問題を先送りした方が上昇しやすいと思います。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。