――本読みの時に監督から「芝居がうますぎるからもっと下手に」という指示を受け、安達さんは考え込んでいたそうですね。その時には何を考えていたんですか。

困ったなぁ…でした(笑)。下手にやってほしいというのは、それまで言われたことがありませんでしたから。なんとかうまくなれないものかと日々考えていますので、困りました(笑)。棒読みにしてみようとか、単純に下手に演じてみるとかいろいろ考えることからはじめて。2回目のリハーサルまでに修正できていれば、クランクインに間に合うという計算もあったので、本番までに監督と何度もお話させていただきました。

――現場では上手く”下手”に演じることはできましたか。

何を求められているのかは理解できました。ただ、できているかどうかは分かりません(笑)。映画を観て思ったのは、今まで自分がやってきたお芝居の方法とは全然違うんだなということ。それから、環境さえ整えばこういう方法でもお芝居ができるんだと気付かされたのは貴重な発見でした。監督のことを信頼していたので今回は初めての挑戦ができましたし、違うチームで再会してもやれるんだという”希望”も感じることができました。

――監督とは今回が3度目。作品が違えば、得るものも違いますか。

全然、違います。1本目は1日だけの撮影だったので、監督がどのような考えの持ち主か分からなかったんですが、2本目は連ドラで3話分くらい出番があったのでたくさんお話しすることができました。その時は、今回とは逆で芝居の技術をたくさん要求される役。そこで、神秘的な部分を描くことができる監督だと感じていたので今回は安心して臨んだんですが、型にはまった演技を求められるかと思いきや…(笑)。同じ方と組んでも、全く違うことができるんだということを知ることができました。

――この映画では「ありがとう」というセリフが鍵となっています。安達さんが今「ありがとう」を伝えたい人は?

もう、いっぱいいます! 両親もそうですし、事務所の人もそう。こんな私を雇ってくれてありがとう! って(笑)。あとは豊島監督も、直接親切にしてくれたからとかそういうことではなくて、私に影響を与えてくださって「ありがとう」と。人との出会いは本当に大事だなと思います。

――本作は芸能界30周年を飾る作品です。30年間芸能界を生きてきて、忘れないと心に誓ったことやモットーなどはありますか。

子どもの頃は何も考えていなかったんですが、大人になって苦しい時期を超えると…超え切れていないような時もありますが(笑)、やっぱり何をしていても感謝の気持ちしかありません。本当に小さいことに感謝しながら生きています。例えば、現場で照明を当ててもらったり、レフを向けてくださったり、カメラで撮っていただいたり。お仕事だからその人にとっては当たり前のことなんでしょうけど、本当にありがたいことだなと。立ち位置にバミを貼ってくださるスタッフさんもサードぐらいのADさんだったりするんですけど、その目印がどれだけ大事な物か…とにかく「ありがとうございます」という気持ちです。

――芸能の仕事としては、何歳から記憶があるんですか。

2歳ぐらいから仕事をはじめて…一番最初の記憶は断片的ではありますが3歳くらいからあります。子供服のモデルをやっていたので、その撮影現場の風景とか。スタッフの人のルックスとか。

――演じることにやりがいを見出したのはいつ頃ですか。

やっぱり、『家なき子』ぐらいから「この仕事を一生やっていけたらいいな」と自覚しはじめました。責任が自分にあるんだと初めて実感できた作品です。

――2012年にブログをスタートしましたね。その最初の投稿で「ファンとのコミュニケーションをとりたい」と書いてありましたが、それまで触れ合いの場はなかったんですか。

結婚するまではファンクラブがあって、年に数回開かれているイベントでファンの方と直接お話をする機会があったんですが、結婚後は続けるのも申し訳ないと思って、ファンクラブを閉鎖させていただきました。それからは人の反応を直接知る機会がなくて。ただ、気になりつつも怖い気持ちもあって、自分からあえて踏み込んでいくことはしていませんでした。ブログのようにまめに更新しなければならないものは、続けられる自信がなかったので(笑)。でも、事務所の人との話もそうですけど、お仕事をしていく中できちんと自分から発信すれば伝わることも多いということが分かってきました。イメージのギャップを埋めるために最適なツールなのかなという思いもあってはじめました。

――トップページの写真は思い出の場所?

あれは全然思い出の場所じゃないです(笑)。マネージャーさんとすごく仲が良いんですけど、休みの日に海に行くことになって、その帰りに寄ったカフェで撮った写真です。すごくお庭がすてきで(笑)。カフェの方に許可をいただいて使っています。すごくナチュラルな、”めちゃくちゃ普段”な私です。その前の写真は髪も長めでクールな印象だったので、違う写真に変えたいと思っていました。

――コメント欄にはファンの方からのいろいろな声が寄せられています。はじめてよかったと思っていますか。

思っています。時々、ガクッとするようなコメントもありますけど、みなさんが応援してくださっているというのが分かりますし、自分がこれはちょっと嫌がられるのかなと思ったことでも意外と反応がよかったり。今回の『花宵道中』に関しても、今まで応援してくださっていた方たちは「脱がないで!」という気持ちがあるんじゃないかなと思っていたんですが、楽しみにしてくださっている方も意外にたくさんいらっしゃって。ブログをはじめてよかったと、すごく思います。

■プロフィール
安達祐実
1981年9月14日生まれ。東京都出身。2歳で芸能界入りし、1993年の銀幕デビューとなる『REX 恐竜物語』で主演を務め、1994年の主演ドラマ『家なき子』(日本テレビ系)は最高視聴率37.2%を記録するなど話題を呼んだ。その後も、ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。そのほか、主な出演作はドラマ『ガラスの仮面』(97年・98年)、『ナースのお仕事4』(02年)、『大奥』(03年)、『トクボウ 警察庁特殊防犯課』(14年)、映画『ヒーローインタビュー』(94年)、『お墓がない!』(98年)、『LOFT ロフト』(05年)、『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』(06年)、『幼獣マメシバ』(09年)、『野のなななのか』(13年)。本作は1994年に映画化された『家なき子』以来、20年ぶりの主演映画となる。