ひよ子は福岡県発祥だと思っていた九州っ子の中には、進学や就職、旅行で訪れた東京都内の駅構内や空港に土産物として売られているひよ子を発見して、ショックを受けた人もいるのではないだろうか? なんせ最近では、東京駅限定のひよ子まで出現しているらしいので、ここらで一度、ひよ子の生誕地をはっきりさせておくのがいいだろう。

見よ! この完璧なボディライン! これぞ「ひよ子」!

ひよ子は今年で102歳に

というわけで早速問い合わせたのは、明治30年(1897)創業の菓子舗「ひよ子本舗吉野堂」。福岡県内では知らない人はまずいない老舗で、各地のデパートやモールにも、かなりの確率で吉野堂の店舗を確認することができる。

同社によると、同社二代目代表の石坂茂氏がひよこをかたどった菓子「ひよ子」を考案して発売を始めたのは大正元年(1912)のこと。チャレンジ精神にあふれていた石坂氏は、常々、大人にも子どもにも愛されるお菓子を作りたいと願っていたというが、ある夜、なんと夢の中に「ひよ子饅頭」が現れたのだとか。

もちろん、なんの脈絡もなく浮かんだというわけではなく、石坂氏のふるさとである福岡県飯塚市が、養鶏が盛んだったという背景も関連しているのだろう。それにしても、そのイメージをそのまま形にしてしまうとは恐れ入る。

「ひよ子」9個入り(税込1,080円)

オリンピックに触発、そして東京へ

その後、「ひよ子」は瞬く間に老若男女に愛されるお菓子に成長を遂げ、三代目の博和氏に経営をバトンタッチしたころには、現在の天神に店を構えるまでになる。そして、博多でも人気を博して九州名物にまで成長したひよ子を携え、ついに東京進出を果たしたのが昭和41年(1966)のこと。

なんでも、昭和39年(1964)に開催された東京オリンピックが契機となり、東京を目指したいとの想いがむくむくと膨らみ、2年後の昭和41年に、東京駅八重洲地下街に東京1号店を出店したのだとか。やがて東北新幹線が開通すると、この店で売られるひよ子は「東京土産」として愛されるようになったというのだ。

そんなこととはつゆ知らず、「ひよ子=東京土産」と認識している人も多いようで、「問い合わせも多くいただきますね」と吉野堂本舗企画課の高田桂さん。しかし、最近ではさまざまな媒体で紹介されていることもあり、次第に問い合わせ件数は減ってきているのだとか。

一度は見学したい! かわいいひよ子たちの大行進

「ひよ子=福岡名物」と広く認知されるようになった理由のひとつに、工場見学もあるかもしれない。同社の工場見学には地元の人はもちろん、県外からも多くのファンが参加しているという。

ひよ子の大行進の現場は福岡県の穂波工場

「餡(あん)が生地に包まれてひよこ型になり、大行列で行進して焼き上がっていく工程が見られますよ」という高田さんのコメントはなんともかわいらしい。見学に訪れた人は、子どもはもちろん大人もみんな、満面の笑みを浮かべてひよ子たちの行進を見守っているのだとか。

「100歳をすぎても変わらない味と姿のひよ子をこれからもぜひ手にとっていただきたいですね。できる限り、福岡産・九州産のものを使って厳選素材で仕上げているので、口にすると再び笑顔満開になってもらえること間違いなしですよ」。

製造過程のひよ子たち。たくさん並ぶとかわいさ倍増!

なかなか九州を訪れる機会がないという人は、オンラインショップで購入するのも一手。「今日は仕事で疲れたな~」なんて日は、かわいいひよ子たちに癒やされてほっこりしてはいかが?