野生の鳥や獣は法律で捕獲が禁止されており、狩猟や害獣駆除などを行う場合には捕獲許可証が必要だ。本来は、鳥や獣を対象とした捕獲許可証だが、"民話のふるさと"と言われている岩手県遠野市では「カッパ捕獲許可証」が発行されているという。いったいどんな許可証なのか、同許可証を発行している遠野市観光協会に話を聞いてみた。

「カッパ捕獲許可証」表面

「カッパ捕獲許可証」裏面

「カッパ捕獲許可証」とは

「カッパ捕獲許可証」は、遠野市土淵町の「カッパ淵」で、カッパを捕獲することができるという許可証だ。カッパ淵は、昔にカッパが目撃されたという場所であり、カッパ淵のある常堅寺は、火事にあった際にカッパが火消しをしてくれたとの言い伝えがあるほか、頭に皿がある「カッパ狛犬」が置かれているなど、カッパとは縁の深いお寺となっている。

「カッパ捕獲許可証」によってカッパの捕獲が許可される「カッパ淵」

カッパ淵には運萬治男さんという案内人(守りっと)がおり、カッパに会いたいと、キュウリなどを餌にカッパ釣りをしているそうだ。その運萬さんが「カッパ捕獲許可証」を持つ唯一の人であったが、10年ほど前に観光協会事務局長と運萬さんが相談して、観光客にもカッパの捕獲を楽しんでもらおう、ということになり「カッパ捕獲許可証」を販売することになったのだ。

常堅寺の「カッパ狛犬」

現在「カッパ捕獲許可証」は、遠野市内の観光案内所「旅の蔵遠野」、道の駅「遠野風の丘」、昔ながらの農村風景を再現した「遠野ふるさと村」、農家の生活様式を再現して民芸品の製作体験なども行える「伝承園」のほか、遠野市観光協会運営のオンラインストア「遠野時間@Shop」にて、210円(税込)で購入することができる。2014年で発売から11年となり、カッパを捕獲できた人はまだいないが、近年では毎年1万枚以上が発行されているという。

「写真入りカッパ捕獲許可証」(ゴールド許可証)

また、「旅の蔵遠野」では、遠野まで足を運んだ人だけに発行される「写真入りカッパ捕獲許可証」も販売されている。購入の際に撮影した顔写真が入っており、発行は後日郵送で920円(送料込・税込)。こちらは更新型のため、更新するために毎年遠野へ訪れる人が増えているそうだ。5年以上の更新を行えなえば「ゴールド許可証」となり、「旅の蔵遠野」で買い物の際に提示すると、買い物が5%割引になるサービスも受けられる。さらに、財布を無くした際に本人確認ができる物がなくて困っていた人が、「写真入りカッパ捕獲許可証」を財布に入れていたため、写真で本人確認が取れた、という手紙が届いたこともあるという。

「旅の蔵遠野」外観

「旅の蔵遠野」店内

紅葉の時季に遠野へ行こう

カッパは、遠野に伝わる多くの昔話に出てくる存在であり、カッパ淵の他には光興寺の「太郎カッパ」なども有名だ。遠野のイメージキャラクター「カリンちゃん」もカッパをモチーフにしており、「カッパの"カ"」、旧遠野市の市の花である「リンドウの"リン"」から名付けられている。「カッパ捕獲許可証」をはじめとして、 木彫りのカッパの置物、焼き物、キーホルダーなど、カッパ関連のお土産も多く、民話の世界に思う存分浸れる土地なのだ。

これからの遠野は、10月中旬頃から紅葉の時期となり、沿岸へ向かう「仙人峠」の紅葉がおすすめ。遠野市は四方を山に囲まれた盆地で、その年の気候にもよるが朝晩の寒暖の差があり、どこを見ても美しい紅葉を楽しむことができる。また、「遠野ふるさと村」では、のんびりとした空気の流れる敷地内に紅葉した木々が多くあり、ゆっくり散歩をしてみると気持ちが良いとのこと。

この秋は、遠野へ足を運んで美しい紅葉を楽しむとともに、遠野でしか手に入らない「写真入りカッパ捕獲許可証」を発行してもらってはいかがだろうか。