大阪や神戸の地元独立系や小規模チェーンのホテルで、宿泊者全員を対象として提供される無料朝食の展開はほとんど見られない。他都市と比較してホテル数は圧倒的に多いだけに意外である。その実態をリサーチすべく神戸とその周辺のホテルへ出向いてみた。

作り手の温もりが感じられる朝食たち(写真は「ホテルアベスト姫路」)

なお、全国チェーンのビジネスホテルの無料朝食は、同一チェーンの店舗間で多少の差異は見られるが、全国的にほぼ同じクオリティー・内容となっている。そのため、ここでは各都市での独立系・小規模チェーンのビジネスホテルで無料朝食サービスを展開しているホテルに注目したい。もちろん「無料朝食」といっても宿泊料金に転嫁されているわけだが、別途料金が発生する「有料朝食」との対比で無料という表現を各ホテルが用いているので、本文でも便宜的に「無料朝食」と表現させてもらう。

健康を気遣ったメニューがずらり

都市部のホテルにおける無料モーニングは、一般的なビジネスホテルよりも、カプセルホテルや温浴施設に併設された宿泊施設を有するホテルで積極展開されている例を見かける。しかし神戸市内においては、一般的なビジネスホテルでの無料朝食がほとんど見られないだけにその特徴が際だつ。

神戸駅からほど近い立地の「神戸ハーバーランド温泉万葉倶楽部」は、充実した温浴施設に宿泊できる多様な客室を併設する人気の施設だ。客室利用の宿泊者にはビュッフェスタイルの無料朝食が提供されるが、宿泊者以外が一般利用した場合には1,200円という設定だけに充実した内容となっている。焼き物、煮物等の一般的なメニューに加え、ひじきやゴーヤのスパニッシュオムレツなど、健康に気遣ったメニューがうれしい。何より館内着でリラックスして利用できるのはありがたい。

「神戸ハーバーランド温泉万葉倶楽部」では、1,200円払えば宿泊者以外でも利用できる

一品一品手作り感が伝わる料理

神戸周辺の都市に着目した場合、明石や加古川、姫路など兵庫県西部の都市でビジネスホテルの無料朝食が積極展開されている。その中でも大きな都市である姫路へ出向いてみた。

姫路駅から車で10分程とアクセスは少々不便であるが、比較的割安なビジネスホテル「ホテル姫路ヒルズ」の無料朝食は内容が充実している。ビュッフェスタイルで和・洋各種メニューが供され、肉じゃがなど手作り感のあるメニューがあるのはありがたい。もちろん、炊きたてご飯、味噌汁、パン、コーヒー・オレンジジュースなどもそろっている。

「ホテル姫路ヒルズ」では手作り感のある肉じゃがなどが並ぶ

スパゲティナポリタンはマスト!

姫路の繁華街に位置する「ホテルアベスト姫路」の無料朝食は、フロントに隣接する明るい開放的なスペースで供され好評。スパゲティナポリタンを中心に、サラダや漬物、デザート、もちろんご飯や味噌汁もそろっている。パンも数種類あり、パン派、ご飯派共にうれしい内容だ。

「ホテルアベスト姫路」では、どこか懐かしいスパゲティナポリタンも登場

大規模ビジネスホテルチェーンの充実した無料モーニングはもちろん魅力的であるが、画一的に供されるメニューとはひと味違った、小規模チェーンホテル、独立系ホテルの無料朝食もなかなか興味深い。おいしい朝食は一日の活力。作り手の顔が見えるようなメニューはうれしいものだ。

※記事中の価格・情報は2014年8月取材時のもの

筆者プロフィール : 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」