すれ違った女性に匂いで"一鼻惚れ"

先日、仕事の休憩中にコンビニへ向かってる途中、すれ違った女性に心を奪われたんです。振り返った時には後ろ姿でしたし、すれ違う瞬間も全く意識して見てなかったのでどんな方かは全くわからないんですけど。恐らく近くの会社のOLさんらしき服装で。

でも、確実に心をわしづかみにされたんですよね。すぐにでも追いかけたい。できたら近くにいたい。二人乗りしたい。そんな妄想まで膨らんだんです。なんと表現するのがいいかわからないんですけど、これ確実に"一鼻惚れ"です。

顔を見て"一目惚れ"と言うならば、僕の鼻孔を誘惑するあの感覚。"一鼻惚れ"ですよ。すれ違い様にシャンプーの匂いがフワーっと鼻孔から脳まで魅了してきたんです。ほら、あの香水とかでは出せないナチュラルでオーガニックで家庭的な安心するあの匂い。僕はどんな香水よりもシャンプーや石けんの匂いが好きなんですよね。

一時期、洗濯物にハマった時期があったんですけど、その時は僕の中で第一次ダウニーブームが到来していて脱水のタイミングでダウニーを多めにぶっ込むという荒技を使っていたのですが、やはり原点であるシャンプーの匂いが最高ということでバブル崩壊(洗剤だけに)。今はリンスのいらないメリットをジョッキで一気飲みしたいぐらい。いや、それに関してはなんのメリットもないから忘れてください。けどそれぐらい愛してる。

まとう匂いで"第一印臭"が決まる

とにかく、"匂い"ってすごい。落ち着かせることもできれば、興奮させることも。神秘的な気持ちから懐かしい気持ちにまで。人それぞれ好みがあり、まとう匂いでその人の"第一印象"ならぬ"第一印臭"が決まるわけだ。今までも気づかぬうちに人の匂いで好みそのものが別れてしまっていたのかもしれない。

"匂い"と言うものは慣れてこそ親しみや安らぎを与えるのだ。僕は生まれた時から身近にあった"シャンプー"や"石けん"の匂いが好みだからナチュラルな匂いを醸し出す女性に魅かれる。しかし、好きになった人が放つ匂いこそが自分にとって安らぎを与えてくれる匂いに変わっていくのだ。

自分が想像もしてなかった臭いを放つ日が近づいている

人は時を経て成長していく。食べるものも住む家も、身につける香水の好みだって変わってくるだろう。その環境に慣れ、気づけば好みの匂いも変わっていくのだろうか。いや、変わっていくのだろう。むしろ、変わってくださいお願いします。

僕が今こうしてシャンプーの匂いがする女性は最高だ。美しい。まじ美ダルサスーン。と冗談をかましている間も体内では刻々と加齢臭が育まれているのだから。脇から湧き出る汁、背中を流れる汁、後退して行く前頭部の髪から滴り落ちる汁。もういつまでもあの頃のように青春を輝かせる汗ではなくなってしまっている。自分から想像もしてなかった臭いを放つ日が近づいている。

家族にとって落ち着き安らぎのある加齢臭を放つことができるのだろうか。それともいつか娘から『お父さんあっち行って』と言われてしまうのだろうか……。家族と洗濯物が別になる日のことを想像すると不安で夜も眠れない。ああ、もうシャンプーの匂いなんてどうでも良くなってきた。

第二次ダウニーブームもそう遠くはないかもしれない。

<著者プロフィール>
吉本ユータヌキ
唐揚げと長澤まさみをこよなく愛す1986年製のたぬき型人間。ブログ『さっきもUたやん』を中心に文章を書いたり、イラストを描いたり、背中を掻いたり。フリーカイターです。重度の虚言癖と盛り癖をわずらっていますので優しく見守ってあげてください。Twitterでは日常が垣間見え過ぎています→@gonnakill_uta